2014 Fiscal Year Research-status Report
スピン偏極ヘリウムイオン生成に関わる電界イオン化の基礎過程の解明
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26600103
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小林 中 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30271373)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘリウムイオン源 / 電界イオン顕微鏡 / 電界イオン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピン偏極ヘリウムイオン顕微鏡の実現を目標とするヘリウムイオン源技術の確立のためには、スピン偏極ヘリウムイオンが生成される上で鍵となる電界イオン化過程のメカニズム解明が不可欠である。そこで、単一原子寸法以下の未だ嘗て計測されたことのないミクロな領域でのイオン生成量を取得することにより、イオン生成率を決める重要な因子である電場、気体原子の供給経路と供給率、イオン化率、電界吸着構造とその安定性等の相互関係をサブアトミックな視点から明らかにすることを助成期間内の目的とする。 そこで、平成26年度は研究室現有の電界イオン顕微鏡(FIM)装置のイオン検出部の改造を行った。即ち、1. 内径70mmΦのイオンビ ーム飛行用チャンバーと、2. 40mmΦの大口径検出器が配置され、同時に2軸方向に位置移動可能なX-Yステージが組み込まれた検出器用チャンバーを設計、製作した。これにより、改造前のFIM装置では、電界イオンの検出領域の広さは単一のタングステン原子の直径(0.27nm)を少し上回る程度であり、隣接する原子を含めたより広い範囲の結晶面領域を詳細に調べることが出来ないという制約を克服して、電界イオンの出射位置を隣接原子まで広げて検出し、周辺原子の影響を明確に捉えたイオン生成の空間的分布をより広範囲で測定可能となった。実際に、変位精度50μmのマイクロメータを取り付けた高精度なプローブ駆動機構により、目標通り1.0nm×1.0nmの試料表面の領域にある個々の単一タングステン原子(直径0.27nm)を水平分解能0.03nmの精度で計測出来ることを、取得した電界イオン生成量の二次元マップ像から確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的および研究計画に基づいて、研究室現有の電界イオン顕微鏡(FIM)装置のイオン検出部の改造を行い、実際に電界イオン生成量の二次元マップ像を取得することで、所定の目標が達成されていることが確認出来ている。また、得られた成果に対しては、国際会議と国内学会および論文により発表を行っており、更に現時点でも複数の論文執筆と学会発表の準備が進行中である。以上により、現時点での達成度はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
助成初年度は、研究計画通りの進展を得たので、今後は昨年度に改造を終えたFIM装置を使って、生成イオンの計数計測を実施する。電界イオン化の初期過程として本質的に重要な役割を果たす電界吸着構造および電界イオン化が効率的に起こる領域(ionization zone)の場所依存性を調べる上で注目すべき試料表面上の位置は、表面上の特徴的な場所(サイト)、即ち、テラス及びステップ端である。それらを、異なる結晶面、結晶軸上のサイトで精査ことにより、結晶学的に異なる環境に置かれた原子位置でどのような違った(または同じ)電界吸着構造を取るのかという事実を突き止め、その背後にある物理機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成26年度助成額180万円に対して、研究計画に基づいて検出器位置移動用X-Yトランスファーステージおよび検出器用超高真空チャンバーを設計、製作した費用が上記の179万9280円であったため、若干の残額(720円)が生じた。当初の研究計画書において必要とした予算額からすると助成額は約6割であったため、製作に必要な部品や費用の不足分は研究室既存の真空部品および研究代表者の研究室予算から供出または補填した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は僅か(720円)であるため、既に提出済みの交付申請書に記載の通り、平成27年度分の助成金(120万円)と合わせて検出部補助排気用ポンプ一式の購入を進める予定である。
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Research Products
(4 results)