2014 Fiscal Year Research-status Report
-60dB高消光比・90%高透過率・堅牢・低コストなテラヘルツワイヤーグリッド
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26600108
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
鈴木 健仁 茨城大学, 工学部, 講師 (60550506)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | テラヘルツ波帯 / 偏光子 / 金属スリット構造 / メタマテリアル / モードマッチング法 / 散乱行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、超伝導体中のヒッグスモードやグラフェンでの光学量子ホール効果などテラヘルツ波を活用した計測により新たな物理現象が観測される中、偏光計測のための極めて高感度なテラヘルツ波帯偏光子が求められている。本研究は先行研究で着想した金属スリットアレー構造による超高感度テラヘルツ波帯偏光子について、物理現象の一般的な数学表現を整理し、設計ツールとなるプログラムを準備し、設計目標値を素子の作製、実験により達成する研究課題である。達成数値目標として、-60 dB消光比、90%強度透過率(透過電力)、高堅牢性、低コストの4点全ての両立を掲げている。 まずは金属スリットアレー偏光子の最適化設計ツールの完成に向けて準備を進めてきた物理計算とFortranプログラムコード(TMモード)の綿密な確認を行い、バグ修正を完了した。消光比は金属スリット内のTEモードの伝搬定数より求めている。誘電体損失のない中空構造、金属スリット内にフィルムを挿入した誘電体構造のそれぞれのテラヘルツ波帯偏光子の設計ツールの準備が完了した。この設計ツールをもとに、作製可能な条件も考慮し、素子を作製、実験評価した。中空構造のテラヘルツ波帯偏光子では、-50 dB以下の消光比は0.4-1.1 THz(帯域: 0.71 THz)、-40 dB以下の消光比は0.3-2.2 THz(帯域: 1.91 THz)、強度透過率(透過電力)は0.3-2.3 THzで平均81%、振幅透過率(電場強度)で平均90%を実現している。フィルム構造のテラヘルツ波帯偏光子では、-50 dB以下の消光比は0.28-1.09 THz(帯域: 0.81 THz)、-40 dB以下の消光比は0.2-1.98 THz(帯域: 1.79 THz)、強度透過率(透過電力)は0.2-1.95 THzで平均76%、振幅透過率(電場強度)で平均87%を実現している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中空構造とフィルム構造の金属スリットアレー偏光子の最適化設計ツールを構築した。周期境界条件を加味したモードマッチング法(TMモード)と散乱行列の利用により高速かつ精密な計算が可能である。電磁界シミュレータを用いた全構造解析には非常に時間が掛かる。中空構造とフィルム構造ともに複数回の実験を行い、-60 dB消光比と90%強度透過率(透過電力)の目標値に向けて、研究実績の概要に記載の数値の通り、順調に進展した。高堅牢性、低コスト化は実現できた。フィルム構造の論文が2015年2月にApplied Physics Expressに採録された。研究の進捗を2014年9月に第75回応用物理学会秋季学術講演会で口頭発表、2015年3月にOptical Terahertz Science & Technology Conference 2015でポスター発表した。2014年9月18日に日刊工業新聞にて研究成果が報道された。なお本GoIS素子(茨城大学帰属にて商標出願)のサンプル提供や技術移転化に特化したプロジェクトがJSTの協力と支援により進行し始めた。2014年11月17日に文部科学大臣を表敬訪問し、本GoIS素子に関する研究説明を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは研究実績の概要で記載した中構構造のテラヘルツ偏光子の論文投稿準備を進める。次に-60 dB消光比、90%強度透過率(透過電力)の値を目標に更なる最適化設計を進める。中空構造での設計値と実験値の誤差の要因の1つとして、導体損が考えられる。導体損を抑えるため、金属スリット表面は金めっきを施している。導体損がどの程度本素子に影響を与えているのか、金めっき前と後のスリットアレー構造を作製し、定量的な評価のため、テラヘルツ時間領域分光法により実験する。
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Causes of Carryover |
当初の計画以上に進展が予想されたため、前倒し請求を行ったことによるものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Fortranプログラムコードによる設計ツールとの比較と検討に使用しているANSYS社有限要素法電磁界シミュレータHFSSの保守費用に用いる。導体損の定量的な評価のためのスリットアレー構造の作製費用に用いる。
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Research Products
(16 results)