2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26600110
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安東 正樹 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90313197)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子的性質 / 巨視的物体 / 冷却 / 振動子 / 基底状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、巨視的物体の量子力学的性質を解き明かすことを目的としている.冷凍機によって4Kの低温まで冷却された振動子を、さらに光-機械結合を用いたレーザー冷却によって抑圧することで、振動モードの基底状態に近い状態を作り出す。その変動を測定することで、フォノンの吸収/放出確率の非対称性などの量子的性質を実験的に確認する。近年では、nmからμm程度の大きさの物体で基底状態の実現や量子的性質の観測が行われているが、本研究では、cmスケールでの基底状態の実現を目指す挑戦的な研究となっている。本研究は、巨視的物体の状態重ね合わせや量子でコヒーレンスといった基礎物理的な観点だけでなく、量子メモリの実現といった応用のための萌芽的研究とも位置付けられる。 本年度は、低温冷却システムの再構築と振動子の設計検討を進めた。本研究では、振動子を冷却するためにパルス管冷凍機を使用している。しかし、この装置のコンプレッサー部が実験室内に設置されていることから排熱や振動環境の面で研究の遂行が困難になっていた。そこで、コンプレッサーを外部に移設する作業を進めた。そのための専用の収納容器や、電気系やヘリウム管の配線を行い、移設を完了させた。その結果、冷凍機動作時に置ける振動や、音響雑音、排熱による実験室内温度変化の影響を排除することができた。振動子の設計においては、ねじれ振動子の特徴を生かすことで低周波数の微小力の直接測定や、それを用いた精密実験(量子輻射圧雑音の直接測定や、空間の量子化に関するCSLと呼ばれる理論の検証)が可能になることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
振動子の安定な制御や感度評価は達成している。冷却時の性能評価までには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた知見を生かし、研究の遂行に努める。
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Causes of Carryover |
平成27年9月までに低温冷却装置の改良検討を行っている過程で、コンプレッサー・バルブユニットの取り付け・設置方法に問題があることが分かった。そのため、再設計を行う必要が生じた。その結果、これらの機器の設置を行うことができたが、冷却試験、クライオスタット内への実験装置設置のスケジュールに遅延が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
振動子の振り子懸架系・光学系、また電気回路部品といった消耗品の購入に使用する。
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