2014 Fiscal Year Research-status Report
光マニピュレーション技術による微小単一液滴の燃焼ダイナミクス解析とモデル化
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26600115
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
川田 善正 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (70221900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
居波 渉 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (30542815)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レーザートラッピング / 燃焼解析 / 光マニピュレーション / 単一液滴 / 光制御 / レーザー計測 / 高速度観察 / 応用光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光マニピュレーション技術を用いて、単一または複数の微小燃料液滴を操作し、ナノメートルからマイクロ領域における燃焼反応のダイナミクスを解析する技術を開発するとともに、微小領域における熱流体の解析、熱伝搬解析を行なうための理論構築を行なうことを目的として研究を実施している。光マニピュレーション技術を用いれば、大気中で微小な単一の液滴を捕捉して制止させることができるため、顕微光学系を用いて、微小領域の燃焼過程を観察・解析することが可能になる。また、共焦点光学系や多光子励起過程を用いることによって、微小領域の反応ダイナミクスを3次元的に制御・解析するための手法を開発する。さらに、微小液滴の燃焼過程を解析するためのモデル化を行なうことが可能となる。 今年度は、大気中で微小液滴を操作する技術を開発することにフォーカスし、そのための光学系の設計、最適化などを実施した。乾燥系で大きな開口数を有する対物レンズを用いるとともに、高出力の半導体レーザーを光源とすることにより、大気中でも十分高い操作性を有する光マニピュレーション技術を開発した。光源に用いる高出力の固体レーザーを用い、安定したレーザートラッピングを実現した。 液体燃料の噴霧機構には、圧電振動子を用いた。液滴を対物レンズの焦点付近に分散させた。その液滴をレーザーマニピュレーションを用いて捕捉した。燃焼反応の発生は、最初の段階としてヒーターによる加熱を試みた。液滴に着火させるために必要な構成、電流量、ヒーターと捕捉液滴の距離などのバラメーター依存性を測定し、最適化を試みた。また、燃焼ダイナミクスの観察には高速度カメラを使用するため、高輝度光源および最適な観察配置について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初の計画である光マニピュレーションシステムを構築し、大気中で液滴を安定的に捕捉することに成功した。このシステムでは、対向させた超作動距離の対物レンズを2つ用いた。このシステムの特徴は、通常光マニピュレーション技術に用いられる高開口数の対物レンズではなく、低開口数の対物レンズを2つ用いることを特徴した。高開口数の対物レンズでは、単一ビームで粒子を補足できるため操作性が高いものの、対物レンズからレーザーの集光位置までの作動距離が著しく短いため、本研究の目的には適さないものと判断した。 そこで、長作動距離の対物レンズを対向させて、粒子を両側から押して捕捉する手法を採用することとした。長作動距離の対物レンズを対向させて用いるため、液滴を燃焼させるための作業領域を大きくとることが可能であり、それにより燃焼のためのヒーターなどの着火装置を配置可能な構成とした。本構成を採用することにより安定して、可燃性液滴を捕捉することが可能となった。 また、光マニピュレーションを実現するための光源についても検討した。当初はコンパクトな半導体レーザーを使用することを予定し、出力、安定性、ビーム形状の良質性などを検討した。半導体レーザーとの比較として現有の固体レーザーについても検討した。その結果、出力安定性およびレーザービーム品質の良好性などから固体レーザーを使用した方が良いことがわかった。とくにレーザービーム品質の良好性は、光マニピュレーション技術にとって極めて重要であるため、固体レーザーを使用することとした。この結果、低開口数の対物レンズを対向させる方法でも、微小液滴を安定的に長時間補足できる手法を確立できた。 以上の成果により概ね順調な研究成果が得られているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に開発した光マニピュレーションシステムを用いて標準試料を測定した結果と理論解析結果を比較検討し、微小な領域における燃焼ダイナミクスの理論構築を行なう。これには、Mie散乱の理論に基づく光散乱および光伝搬の解析と、有限要素法やナピエストークス方程式の数値解析などを組み合わせることによって、熱流体の挙動特性を解析する。また、解析結果と基礎実験の結果の比較から、提案した微小領域の反応ダイナミクスの解析手法の問題点、理論解析手法の問題点を明らかにし、システム全体の再検討を行い、試作システムの改良を行う。特に空間分解能について検討し、より高い分解能を有するシステムを実現する。また、液滴の燃焼の明視野観察像は、コントラストが低く、流体の流れが解析できないと予想される。そこで、シュリーレンやマッハツェンダ干渉計を導入し、より高いコントラストで定量的に観察する光学系についても検討する。 また、空間位相変調素子を用いて、複数の微小液滴を同時にマニピュレーションし、液滴の燃焼反応がどのように伝搬するかを明らかにする。微小液滴の距離、大小比などによる反応の伝搬特性の違い解析する。空間光変調器を用いれば、複数の集光スポットを形成することができ、それらを独立に面内および光軸方向に制御することが可能である。したがって、粒子間の距離、粒子間の配置による伝搬特性解析することができ、燃焼過程をモデル化して計測することが可能である。さらに、レーザー点火光学系に空間光変調器を導入することで、多点同時もしくは時間差の点火が可能となり、液滴群の燃焼メカニズムの解析に有効である。
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Causes of Carryover |
当初は、光マニピュレーションを実現するための光源として、コンパクトな半導体レーザーを使用することを予定し、そのための電源ドライバーを購入することを予定していた。半導体レーザーの出力、安定性、ビーム形状の良質性などを検討し、比較として現有の固体レーザーについても検討した。その結果、出力安定性およびレーザービーム品質の良好性などから固体レーザーを使用した方が良いことがわかった。とくにレーザービーム品質の良好性は、光マニピュレーション技術にとって極めて重要であるため、固体レーザーを使用することとした。そのため、半導体レーザーの電源ドライバーの購入が不要となり、現有の固体レーザーで代用することになった。また、光学部品購入も現有のものをいくつか代用することが可能であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の使用計画としては、主に応用研究に向けた消耗品費として、利用する予定である。開発した光マニピュレーションシステムは、内燃機関内の噴霧燃料の反応過程の解析だけではなく、レーザーによる微小粒子の破壊および除去、集光レーザービームによるプラズマの発生、超音波の発生過程の解析など様々な分野への応用が期待できる。また、微小液滴界面での化学反応、微小液滴同士の結合過程の解明など、捕捉した液滴を高速度カメラで観察・操作することにより、これまで明らかにされてこなかった界面での反応が解析できるものと期待する。また、微小液滴間の化学反応、微小液滴からの微結晶成長過程などを観察することができ、化学反応プロセスを利用したナノ粒子の作製過程の解明および制御などへの応用も期待できる。これらの応用分野おける有効性を検証するために、光学部品、化学薬品などの消耗品費として使用する。
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