2015 Fiscal Year Research-status Report
孤立アト秒パルスの回折限界集光と世界最高強度 XUV 場発生
Project/Area Number |
26600122
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高橋 栄治 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 専任研究員 (80360577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 光紀 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40375168)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 応用光学・量子光工学 / 光学素子 / アト秒パルス |
Outline of Annual Research Achievements |
XUV ミラーの材料候補である SiC/Mg, Cr/Mg, Sc/Si の三種類の多層膜ペアーを各種成膜条件下において製作し,分子研 UVSOR BL5B を用いて実波長における反射率測定を行った.計算反射率には劣るものの SiC/Mg において 40 % 近い反射率と 2eV を超えるバンド幅を得ることに成功した.得られたバンド幅は 500 アト秒以下のパルス幅をカバーすることができる帯域量であり,反射率,バンド幅共にアト秒レーザーを集光する光学系に十分使用できる多層膜ミラーを製作することに成功した. 一方,アト秒レーザーにおいてフーリエ限界パルスを実現するには,ミラー帯域だけでなく多層膜ミラーの反射位相を制御する必要がある.そこで TEY (Total Electron Yield) 法を用いて製作した多層膜ミラーの反射位相の評価を行った.放射光による反射率測定の際,反射光強度と同時にミラー表面からの光電子の量を測定する.光電子の脱出深さは 1 nm 程度で,その量はミラー表面の光強度に比例する.また,ミラー表面には,入射光と反射光からなる定在波が生じており,定在波の節や腹の位置はミラーの反射位相により変化する.これら2つの関係を用いて,ミラーの反射位相を推定することができる.TEY 法から得た反射位相は数値計算により求めた設計値と良く一致しており,作製した SiC/Mg 多層膜ミラーにおいて,ほぼ設計通りの反射位相スペクトルが得られることが明らかになった.さらに,測定した反射位相,ミラー帯域,および理研において稼働中のアト秒レーザーのバンド幅を用いて本ミラーを組み込んだシュバルツシルト光学系により取り出すことができるアト秒パルスの時間プロファイルの評価を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射光を用いた実波長におけるミラー効率評価により,シュバルツシルト光学系に採用する多層膜材料及びパラメーターの決定まで完了し,現在ミラペアーの成膜段階にあることから,おおむね順調に進んでいると考える,また TEY 法により当初予定していなかった多層膜ミラーの反射位相スペクトルを実験的に決定できたことは,分散に敏感なアト秒パルスを取り扱う上で非常に重要な情報となる.一方,理研にて取り組んできたアト秒パルス生成用の2波長合成レーザー場発生装置の再立ち上げ,及び高安定化も全て完了した.
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Strategy for Future Research Activity |
東北大にて製作中の特別設計のミラーホルダーに成膜された多層膜ミラーを組み込みシュバルツシルト光学系の立ち上げを行う.また開発されたシュバルツシルト光学系によるアト秒パルスの集光実験に取り組む.
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Causes of Carryover |
他予算からも本研究について補助が得られた為,本研究費から拠出する予算を抑えることができ,結果余剰金が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ミラー成膜の為の多層膜材料,及びレーザー用光学部品を購入予定.
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