2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26600137
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢代 航 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10401233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北條 大介 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (30511919)
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80323096)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | X線 / イメージング / 小角X線散乱 / 干渉計 / 金属ガラス / ナノ粒子 / 微細加工 / 表面・界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子ソフトマテリアルの研究や、有機デバイス等の多くの分野で、軽元素から構成される試料等の内部を高感度で可視化する技術の重要性は近年ますます高まっている。本研究は、X線回折格子干渉計をさらに発展させ、超高感度のX線位相イメージングおよび小角X線散乱イメージング技術の開発を目指すものである。超高感度化は、光学系の超小型化や、シグナルのロックイン検出など、従来にはなかった着想によって実現する。さらにその派生型として、X線位相エラストグラフィ、GISAXS(Grazing-Incidence Small-Angle X-ray Scattering)イメージング・トモグラフィ、反復的位相回復法との組み合わせによる超解像実空間イメージングなど、独創的な方法の開発を目指す。 平成27年度は、光学計の全長を小さくして超小型回折格子干渉計を実現するための、狭周期回折格子作製プロセスの開発を前年に引き続き続けた。東北大学金属材料研究所の加藤秀実教授との共同研究の結果、金属ガラス結晶化インプリント技術によって、重元素からなる高さ30μmの高アスペクト比X線用回折格子の作製に世界ではじめて成功した。これにより、1μmを切るさらなる狭周期化への道筋が開けた。 さらに、前年に引き続き、大型放射光施設SPring-8のBL20XU(中尺ビームライン)において、GISAXSイメージング・トモグラフィの実証実験を行った。通常のGISAXSイメージングは、マイクロビームに対して試料を走査することによって実空間マッピングを行うが、本手法では、シート状のビームで、試料の走査なしに実空間分布の定量的イメージング(すなわち構造解析)が行えるという利点がある。テスト試料を電子ビーム描画装置とリフトオフにより作製し、シート状ビームを用いて、トモグラフィのテスト実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の成否を左右する新規微細加工プロセス(金属ガラスのインプリント技術)による回折格子の作製は、昨年に引き続き順調に進んでいる。今後1μm周期を切る狭周期化の道筋はみえており、残り1年の研究期間で大きなブレイクスルーを生むと期待される。 GISAXSイメージング・トモグラフィについては、電子ビーム描画とリフトオフによって、表面に多くのドット状のパターンを形成したテスト試料を作製し、SPring-8のBL20XUにおいて実験を行ったが、表面のドットによるコントラストは得られており、今後の解析が待たれるところである。この技術は、従来のX線反射率法の配置に回折格子(空間コヒーレンス度が高い放射光が利用できる場合には、1枚の位相型回折格子、実験室のノーマルフォーカスX線源では3枚の回折格子)を加えるだけで、X線反射率の実空間分布だけでなく、表面に平行な方向の構造情報の実空間分布を画像として定量的に可視化できる(すなわち構造解析ができる)方法であり、大きなインパクトを生むと期待している。 一方で、試料に変調を加える高感度イメージング法の開発は、予算不足などのため、必ずしも目論見通りには進んでいない。また、東北大原子分子材料高等研究機構の北條大介助教と進めているナノ粒子充填法についても、今年度は進捗がなかったが、金属ガラスインプリント技術の開発が進んでいるため、全体計画には大きな影響は生じていない。これらの進捗状況を総合的に評価して、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も、平成27年度に引き続き、サブμm周期の高アスペクト比(高性能)回折格子を、金属材料研究所の加藤秀実教授とともに進めていく。サブμm周期実現のためには、まずは鋳型を開発する必要がある。平成28年度は鋳型の開発に充填をおき、最終的に、表面張力などを利用して、高アスペクト比のX線用金属ガラス解説格子の作製を目指す。実験室光源および放射光を用いて、超小型高感度X線回折格子干渉計の実証実験を行い、さらなる改良も目指す。X線の波長、回折格子の周期、光学系のパラメータなどを変化させ、最適な撮像条件を探る。 GISAXSイメージング・トモグラフィについては、前年度のデータ解析を急ぐとともに、より一般的な試料への応用可能性について検討する。解析プログラムの整備は平成27年度にほぼ完了したため、平成28年度はトモグラフィ用に拡張する。一方で、成果はすみやかに高インパクトファクター誌に投稿する。さらに、X線のエネルギー依存性についても検討する。平成27年度は9 keVのX線で、(USAXS領域ではなくSAXS領域の)50 nmサイズの情報まで得ることができたが、平成28年度は、さらに低エネルギーのX線を利用して、50 nmサイズを切る構造情報を得ることを目指す。例えば、予算の許す範囲で、最近注目されている3 keV前後のエネルギーのX線を利用して、真空中で実験を行うことを試みる。 試料に変調を加えることによって高感度化を目指すX線位相エラストグラフィ法の開発も予算の範囲内で進めていく。
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