2014 Fiscal Year Research-status Report
ホットウォール金属イオン照射装置による原子内包フラーレンの量産技術
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26600144
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Research Institution | Oshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
浅地 豊久 大島商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70574565)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子内包フラーレン / プラズマ / イオンビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新規材料として期待されている金属内包フラーレンの量産用の合成法および装置開発を目的としている.プラズマチャンバー壁を加熱するホットウォール法で蒸発温度が高い金属の高密度プラズマを生成し,その金属イオンを低エネルギーのイオンビームとしてフラーレンに照射することで合成を行う. H26年度は,ホットウォールプラズマ装置の設計・製作および基礎実験としてイオンビームの生成・計測を行った.ホットウォールプラズマ装置は高周波導入部,ホットウォールプラズマ生成部,イオンビーム生成部に分かれており,基礎実験用に石英管を真空チャンバーとして用いた.プラズマ生成は磁場による支援があるものの,基本的には平行平板型プラズマのため1-10Pa程度の圧力が望ましい.それに対して,イオンビーム生成部は平均自由行程が数十cmになる10-2Pa台にする必要がある.これらの条件を実現するため,圧力差がつくような構造設計を行った.その結果,アルゴンおよび窒素プラズマ生成でこれらの条件を達成し,イオンビーム生成およびアインツェルレンズを用いたビーム集束効果も確認した.ビーム引き出し電極から取り出されているビーム電流は100μA以上であった.しかしながら,電極位置,電極間隔,ビーム引き出し穴径などの最適化が十分に行うことができず,プラズマ生成部から40cm程度離れた合成実験位置のイオンビーム電流は最大5μAであった.これまでの知見をベースに,今後金属イオンビームの生成に進むが,十分なビーム電流量を確保するために引き出し電極直後でビーム照射を可能とする装置構造が良好と考え,現在,装置の改造設計を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の最初の研究項目であったホットウォールプラズマ装置の設計・製作に予想以上の時間を要し,さらに,異常放電やイオンビーム電流量が予想より低いという課題がでたため,現在計画に対してやや遅れていると考えている.この遅れを取り戻し,2年目の主たる研究項目である金属内包フラーレンの合成実験を速やかに進めるためにも,まず装置改造が必要と考え,現在,改造設計を進めている. しかしながら,当初懸念していた,平行平板型でのプラズマ生成において,プラズマ密度の低さからイオンビーム量が確保できるかという課題に関しては,ビーム引き出し電極付近で100μA以上の電流量が確保できていることが確認でき,今後の合成実験には十分と考えられる. 合成実験に関しては,第一段階として,シリコン基板上のフラーレン薄膜に窒素ビームを照射する実験を実施済みで,今後,時間飛行型質量分析装置を用いて材料分析を行う予定となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の5月末を目処に,1年目に製作したホットウォールプラズマ装置のイオン照射量の向上および異常放電対策を目的として,装置の一部を改造する.1年目のイオンビーム生成実験では,窒素イオンビームの場合でもμAオーダーのビーム量しか引き出せなかった.この原因は,高温炉のサイズから生じた装置制約上の理由で,プラズマ生成部から40cm程度離れた合成実験位置までイオンビームを引き出さなければならず,ビームの引き出し電極や集束レンズの最適化が不十分であったためと考えられる.しかしながら,それらは本研究の目的である合成実験について本質的な問題では無いため,その最適化に要する時間を省くための検討を行った結果,プラズマ生成部付近でイオンビーム照射が可能になるように,現在,装置の改造設計を進めている. この装置改造の設計・製作を早急に終え,まず基礎実験として,フラーレン薄膜への窒素イオンビームおよび蒸発温度の低い亜鉛イオンビームの照射実験について,8月を目標に進めていく.その後,合成効率の向上を図るため,ビーム照射部にフラーレン炉を追加し,フラーレン蒸気中へのイオンビーム照射による気相合成法を試す. これらの実験において効率の良い合成法および実験条件を調査し,その方法を用いてより蒸発温度の高い材料(例えばマンガンや銀)に対して合成実験を行う.この際には1000度を超える温度設定になるため,新たに電極等にモリブデンやタンタルの高融点材料を用いる高温対策を行う予定である.
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Causes of Carryover |
初年度の3月時点で,現行装置による窒素内包フラーレンの合成実験までを終え,装置改造が必要と判断して実験を中断した.現在,装置改造設計に入っており,予算の一部を次年度に繰り越すことにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に合成装置の一部改造を計画しており,その費用の一部として使用を予定している.
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