2014 Fiscal Year Research-status Report
永久磁石を用いた磁場調整機構付き次世代光源用偏向磁石の開発
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26600150
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
渡部 貴宏 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 副主席研究員 (90282582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深見 健司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 副主幹研究員 (60463311)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 次世代放射光源 / 永久磁石 / 偏向磁石 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁場調整機構付き次世代光源用偏向磁石を開発すべく、主に、(i) 既に有しているインフラを用いた偏向磁石テストベンチ試験、磁場調整機構の原理実証、および性能評価、(ii) 3次元コードによる次世代光源用偏向磁石の設計、を行なった。以下に、(i)(ii)それぞれの実積概要を述べる。 (i)申請時に想定していた額に対する配算の減額により、当初予定していた磁場調整機構の製作は困難なものとなったが、本研究の目的は達成すべく、別途有していた鉄板等による簡易的な磁場調整機構を組み立て、本研究で提案していた磁場調整機構の原理実証試験を行なった。その結果、予め行なっていた数値計算と概ね一致する結果を得、今回提案していた磁場調整機構が機能することを実証した。本格的な機構の製作は、別予算にて行なうことになったが、本研究の目標の1つであった磁場調整機構の原理実証は想定通りの結果が得られたことになる。 (ii) 本科研費を用いて製作する偏向磁石の設計を3次元コードを用いて行なった。次世代光源で実際に用いる為には、上述の磁場調整機構に加え、温度依存性に対する補償、放射線減磁を抑制する構造、偏向磁石内のLongitudinal方向に磁場勾配をもつLongitudinal Gradient Bend(LGB)などが重要であることは申請書にも記載した通りだが、これらを克服すべく、Fe-Ni合金による温度補償機構を持った磁気回路、Hybrid構造による減磁対策等を踏まえた設計を行なった。特に、次世代放射光では、入口と出口で4倍程度磁場が違うLGBが必要とされる一方、High-packing factorに対応すべくGapは一定が良いため、Gap一定ながら磁場がLongitudinal方向に大きく変わる磁気回路を設計した。具体的な工夫の内容については、計画終了時の報告書にて行なう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、2年度かけて磁場調整機構の製作、原理実証を行なう予定であったが、これは初年度に終えることが出来た。また、次世代放射光源のための基礎的な磁石設計を想定していたが、現在検討が進んでいるSPring-8次期計画「SPring-8-II」で実際に用いることを想定した磁石設計を既に行なっており、2年度目に試作を行なう磁石は、当初の予定よりも本番に近い形で行なうことが出来ることになった。また、これまでほぼ前例のないLGBについても、申請当初にはなかった新規アイデアを採用することで理想に近い磁場分布をつくることが出来ることが数値計算により確認された。これらの点は、当初の予定よりも進んでいると言える。 予算執行という面では、初年度のうちに磁石製作を終える予定だったのに対し、減額に対応すべく計画を変更し、改めて設計しなおしたこともあり、2年度目に製作を行なうことになった。この点は、当初の予定よりも遅いことになる。ただし、本実施状況報告書を作成している時点(平成27年5月時点)で既に設計は終え、今夏の完成に向け業者の製作が既に開始されており、本研究の全体計画が遅延している訳ではない。 以上を踏まえ、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在製作が進んでいる磁石は平成27年8月に完成予定。磁石の性能を評価する3次元磁場計測器(ホールプローブ)等は、既に当施設で有しているため、磁石の納品後、速やかに性能を評価する。このための実働時間は最大で1ヶ月程度あれば十分であるため、準備、考察等を含めても平成27年度中に十分に完了することが出来る。 ここまで行なってきた3次元コードを用いた磁気回路の開発自体(理想に近いLGBを実現するための新規アイデア等々)も本研究課題の成果の1つであり、年度終了までにこれらの知見も整理し、必要に応じ、試作機とは別に設計検討も継続する。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、初年度に試作磁石の設計、および業者打合せを終える予定であったが、打合せを行なう業者が大きな発注を別途受け、本件への業者側の対応に何度か遅延・キャンセルが続いた。その結果、発注が数ヶ月遅れる自体となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述のとおり、当初の予定よりは遅れる事態となったが、その間、我々の設計・考察は進み、科研費申請時には想定していなかった点も設計・検討を行なうことが出来た。 数ヶ月間の発注の遅れは、本科研費の執行という点では問題なく、十分に次年度の計画を遂行できる。8月中旬に製作が終わり、納入された後、迅速に性能評価に入れば、年度末までに問題なく結果を得ることが出来る。
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