2015 Fiscal Year Research-status Report
メニーコア演算器によるプラズマ粒子シミュレーションコード高速化への挑戦
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26600152
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齊藤 慎司 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60528165)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 計算物理 / 宇宙物理 / プラズマ粒子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではメニーコア演算器を用いたプラズマ粒子シミュレーションコードの演算高速化を実現することを目的としている。プラズマ粒子シミュレーション手法は大量の粒子軌道計算に加え、その運動をもとにした電流場の積分計算が必要となる。通常この際にメモリアクセスが連続にならない場合が多く、メニーコアでの並列化に加え、各コアでのベクトル化やキャッシュチューニングに配慮した高速化が必要となる。本研究ではXeon Phi上でいかに効率よくプラズマ粒子シミュレーションを実現するかに焦点を当てたコード開発に挑戦している。 今年度の計画として「非同期転送手法」を用いてCPU側のメモリとXeon Phi側のメモリの間でデータのやりとりを行いながら大規模計算を実現するという手法を開発していたが、この手法は計算の効率化という観点で将来的に大きな恩恵が得られないだろうという結果に至った。また、PCIeを用いたXeon Phiの利用が将来的に減少してくると思われることから、メニーコアを最大限利用するためには転送手法の効率化よりXeon Phi内での演算効率化を目指すことが重要であるという認識に至った。 今年度はXeon Phi上での並列化およびキャッシュチューニングに注力しコード開発を進め、STEシミュレーション研究会においてこの進捗状況について報告を行った。粒子シミュレーション計算において重要な部分の1つである粒子軌道計算モジュールについて、CPU(8コア)での計算より約1.6倍以上の効率化が実現された。今後は電流計算モジュールの開発に加え、MPIによる並列化にも着手する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Xeon PhiとCPUの間でデータ転送を行いながら計算を行う「非同期データ転送手法」による粒子シミュレーションの計算の効率化に取り組んでいたが、開発を進めるに当たり、この手法は計算の効率化という観点で将来的に大きな恩恵が得られないだろうという結果に至った。また、PCIeを用いたXeon Phiの利用が将来的に減少してくると思われることから(PCIeを介さないモデルが登場したため)、メニーコアを最大限利用するためには転送手法の効率化よりXeon Phi内での演算効率化を目指すことが重要であるという結論に至った。このため今年度はXeon Phi内でのチューニングに注力し計算手法の再構築から改善を進めており、当初のコード開発計画より進捗としてはやや遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
各モジュール単位(粒子軌道計算モジュール、電流計算モジュール)でのXeon Phiによる並列化、キャッシュチューニング、ベクトル化を進め、年度前半中に単体での粒子コードの開発を完了する予定である。また、年度後半についてはMPIを用いた複数のXeon Phiでの演算を実現する予定である。当初の計画では最終年度(平成28年度)において、運動論的プラズマ乱流の大規模計算を実施する予定になっているが、コード開発の状況がやや遅れているため、研究期間の1年延長を視野に入れ、延長期間中に運動論的プラズマ乱流の計算を行い物理研究での成果を挙げたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画では小規模な並列計算コードの開発を完了し、大規模計算のテストを実施する予定であった。そのため名古屋大学のスーパーコンピュータを利用する計画であったが、現状の進行具合としてはやや遅れている状況にあるため、この開発に対するスーパーコンピュータの利用を実施しておらず、その分の利用料が発生しなかったため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度後半には大規模計算のテストを開始する計画であるため、この際のスーパーコンピュータ利用料として使用する予定である。また、現在進捗状況としてはやや遅れている状態にあり、本課題の当初目的の達成のために次年度への期間延長を考えている。期間延長中に名古屋大学のスーパーコンピュータを多く利用する必要があるため、このことも併せて経費の使用を計画している。この中にはスーパーコンピュータの利用料に加え、成果発表旅費および論文投稿料など、得られた成果の発表関連の費用も使用計画として含める。
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