2014 Fiscal Year Research-status Report
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26610001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺尾 宏明 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90119058)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 代数学 / 超平面配置 / ワイル群 / イデアル / 指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユークリッド空間内のルート系は,リー群の分類という大きな目的のために,ヴィルヘルム・キリングとエリー・カルタンによって19世紀末に導入され,現在では,数学の広い分野における普遍的かつ重要な存在として認識されている.しかし,100年以上の研究の歴史にもかかわらず,ルート系に関する謎はまだまだ尽きない.本研究では,ルート系から決定されるワイル群に属するすべての鏡映の鏡映面を集めてできるワイル配置の部分配置を詳細に調べることにより,ルート系の未知の領域に切り込むことを目標としている.本研究計画の出発点は,すべてのイデアル配置が自由配置になり,その指数とルートの高さとの間に,双対分割という組合せ的な関係が成立しているというSommers-Tymoczkoの第2予想を肯定的に解決したAbe-Barakat-Cuntz-Hoge-Terao(ABCHT)論文であった. 26年度の実績は,以下の2点である. 1.阿部拓郎(京大)との共著論文(投稿中)で,無限枚の超平面を含むアフィン・ワイル配置の中に,すべての一般化カタラン配置と一般化シー配置を含むフィルター付けが存在して,各フィルターに関して,その指数とルートの高さとの間に,双対分割関係が成立することを示した.これは,上記のABCHT論文の拡張である. 2.中島規博(豊田工業大)と辻栄周平(北大)との共著論文(投稿中)におい,ワイル配置の複素数版である複素鏡映配置(あるいは,ユニタリ鏡映配置)の不変式論を研究した.具体的には,不変式の基底として,ある種の微分方程式を満たす良い性質(調和的と呼ばれる)の基底が常に存在することを,分類論を全く用いずに証明することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は,26年度交付申請書にも明記されているように,Sommers-Tymoczko の第1予想を証明することであった.そのため,26年度の研究実施計画として,米国チーム(Solomon, Sommers, Tymoczko)との共同研究を予定していた.しかし,米国チームのリーダーである Louis Solomon が健康上の理由で,26年度中,共同研究に全く参加できなかった.彼は,年齢こそ80歳を越える高齢とはいえ,確かな記憶力と鋭い知性に,最大限の信頼を置いていた私は,リーダーを失った米国チームとの共同研究を26年度から27年度に移行することを急遽決断した.一方,ドイツチーム(Roerle-Barakat-Cuntz-Hoge)とは,12月にドイツのBremenで研究打ち合わせを行うことができ,順調に成果を積み上げている.しかし,26年度の海外共同研究計画は,全体として遅れていると言わざるを得ない. 幸い,国内研究者との共同研究においては,上記の「研究実績の概要」の1.2.とも,当初の計画を大きく上回る進展を見せていることもまた事実であるので,全体としては,「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「現在までの達成度」に書いたように,26年度は,米国チームとの共同研究が全く実施できず,結果として,かなりの予算を最終年度の27年度に持ち越すことになった.それに伴い当然のことではあるが,27年度は米国チームとの共同研究を積極的に推し進める計画である.具体的には,米国チームと3回,ドイツチームと2回程度の打ち合わせを計画している. ただ,万一,共同研究者の健康が回復しない場合も想定しておく必要があるであろう.その場合には,機動的に研究計画を変更せざるを得ないことは言うまでもないが,現時点で,どのような変更になるかは確言できない.以下のふたつの案が考えられるであろう. 1.Louis Solomon に代わる代数群の米国在住の研究者に加わってもらう.(この場合は,Sommers と Tymoczko と相談する必要がある.彼らは,それぞれ,Kazhdan, Lusztig門下であり,米国の多くの優秀な代数群研究者に人脈があるので,十分可能と思われる.) 2.米国チームは,3名体制から2名体制に移行し,その代わり,国内の研究者をひとり補充する.(国内には (Sommers-Tymoczkoの第1予想に登場する)Hessenberg多様体の研究者が複数いるので,十分可能と思われる.)
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Causes of Carryover |
米国チームのリーダーである Louis Solomon が健康上の理由で,26年度中,共同研究に全く参加できず,26年度においては,米国チームとの共同研究をあきらめざるを得なかった.そのため,日米いずれかで2回程度実施予定だった研究打ち合わせを行わなかったことが,次年度使用額が生じた主な理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Louis Solomonの健康状態が回復することを前提に,26年度の遅れを取り戻すためにも,26年度にあきらめた米国チームとの打ち合わせを,27年度は3回程度行い,次年度使用額を使用する予定である.
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