2014 Fiscal Year Research-status Report
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26610011
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮岡 礼子 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70108182)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 極小曲面 / ガウス写像 / 除外値数 / Nevanlinna理論 / 対数微分の補題 |
Outline of Annual Research Achievements |
「有界領域の値分布論」で研究してきた代数的極小曲面のガウス写像の除外値問題の解決に引き続き取り組んでいる.曲面の基本領域内で,ガウス写像の像の面積とソース曲面のオイラー数の絶対値の比で得られるRという不変量により,Ossermanの得た評価の別証,全分岐値数の新しい評価を得たが (Forum Mathematicum,2008),この方法では種数とパンクチャの無限の場合分けの議論を要し,解決はほど遠くなる.そこで,データを普遍被覆である複素円板 D にリフトして,複素円板上にNevanlinna理論を構築するという方向での研究に取り組んでいる. まず 半径 t の円板D(t)のガウス写像の像のFubini-Study計量による面積と,D(t)上の双曲計量による面積比にあたるものの評価を考えた.これを κ とおくと,κ<e+,すなわち自然対数の底であるeより少し大きい数で上からの評価が得られ,これは以前に得た R が下から1で抑えられることに対応している,この議論の正当化にまだ時間を要するが,これにより,D上にNevanlinna 理論を展開することが可能となり,対数微分の補題の適用により,ディフェクトの評価に近づく. しかし最終的には曲面の周期条件である,ある正則微分の積分の実周期が消えることがこの問題の本質であり,これを使わなければ,代数的でない極小曲面と同じ評価しか得られない.実周期の消滅は,指数関数に周期を入れたものが絶対値1になることと言い換えられ,この言い換えにより,条件を有効に使うことができる.ここまでのStrategyを得たことが現時点での実績である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
曲面を普遍被覆空間である複素円板にリフトすることにより,ガウス写像は複素円板から2次元球面への正則写像になる.これは元の曲面の基本群で不変と言う特殊な正則写像であり,その除外値数は複素平面で論じられる従来の除外値問題とは全く異なる手法で論じなければならない. 現在,円板の半径が1に近づくときのガウス写像の面積の増大度について,球面のFubini Study計量で計った面積と,ソース曲面の双曲計量で計った面積の比を求める議論を行っている.これは基本領域で以前得た不変量Rを,リフトして総括的に考える積分量の評価であるが,円板の計量を平坦,球面,双曲平面と3通りに扱い,その関係を調べるという困難が伴う.値の評価はかなり以前から得られているが,正当化するための議論に時間を費やしている. これが解決すると,円板の半径である有界な径数を無限径数に変換し,Nevanlinna理論の枠組みに当てはめることができる.そこで対数微分の補題を駆使し,ディフェクトの詳細な評価を行い,最後に周期条件を用いて,除外値及び全分岐値数の評価を行う. 以上,問題攻略のストーリーは確立しており,一つ一つの積み上げを行っている所である.
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Strategy for Future Research Activity |
曲面の基本群の作用を上手に使うことにより,積分量の比の評価から径数変換を可能にした上で,Nevanlinna理論の構築を行う.またWeierstrassデータが実周期をもたないことをうまく利用することにより,ディフェクトの最終評価につなげていく.
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Causes of Carryover |
研究打ち合せと研究成果報告を,相互訪問以外に,学会及び他の研究会の場などで行うことができたため,当初の計画よりも頻度が減少した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度はこの研究に興味を持っている,厚地淳氏,相原義弘氏らを招聘し,議論を深めることを考えている.また,研究打ち合せの頻度を高め,研究の進展を急ぐつもりである.
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