2016 Fiscal Year Research-status Report
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26610011
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮岡 礼子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 総長特命教授 (70108182)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 代数的極小曲面 / ガウス写像 / フビニスタディ計量 / 双曲計量 / ネバンリンナ理論 / 対数微分の補題 / 除外値数 |
Outline of Annual Research Achievements |
代数的極小曲面のガウス写像の除外値数の評価について,予想とする2以下を示すことを目標とし,研究を行っていたが,H28年夏にブラジルから出た論文で解決されたとの情報があり,その論文の検証を行った.それが正しければ等研究の目標は他の研究者により達成されたことになるが,現時点(H29年4月)で当論文に対する疑義があるようで,研究を継続する意味が生じている. 我々の手法は,ネバンリンナ理論を通常の複素平面ではなく,複素円板上で行うという点で他に類を見ない手法であり,何ら参考にすべき先行研究がないため,多くの困難を伴っている.極小曲面の基本領域は,その普遍被覆である複素円板にリフトされることで全てのデータもリフトされ,特にガウス写像が円板からの有理形関数となる.その値分布を調べるためには,円板を半径rに制限したD(r)上の個数関数と接近関数の増加度を評価する必要があるが,複素円板に分布する基本領域の変形により,この評価は容易ではない.第1段階として,ガウス写像によるフビニスタディ計量の引き戻しと,複素円板の双曲計量の二つでこの量を測り,その比を上から評価することを考え,これは既に結果が出ている.ただし,わかりやすい証明を与えることは非常に困難で,多くの時間を費やしている. 第2段階として,最も重要な周期条件をどう活かすかという観点で,ワイエルシュトラス表現のサイクル毎の周期が純虚数であるという条件を,指数関数の肩に乗せると絶対値が基本群の作用で不変である,という観点で用いる.その結果この関数に対する対数微分の補題を示すことができ,ネバンリンナの第2主要定理につなげて,除外値数の評価を得る. ストーリーとしてはこのように組み立てられ,現在細部を厳密に証明することを継続して行っている. 当科研費は,共同研究者の小林亮一名大教授とのやり取りのため主として使用した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究概要で述べたように,H28年度は他の論文を検証する作業が入ったため,当初の予定が大幅に遅れた.現在その論文に疑義のあることがわかり,我々の研究を従来通り継続することの意義を見出した.この事由により,H29年度に延長した当科研費を使用し,小林氏との研究打ち合わせを密に行い,論文(現在117ページ)を完成し,投稿までこぎつけたいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
第1段階の比を評価するところでは,Parabolic localzationという手法を用いて,古典的なCohn-Vossenの不等式を再構成し,第2段階の考察につなげる.Parabolic localization は全く新しい手法で,双曲変換による基本領域の変形を具体的に考察し,数値的な計算に結びつけるという離れ業が必要である.この基本領域の変形の度合いを計るためには確率論的手法も要し,これを厳密な形で書き下すのは容易ではない.まずこの部分の完成を目指す. 第2段階では,周期条件というこの問題の本質をどう活かすかという問題に直接取り組み,座標関数を指数関数の肩に載せることにより,周期が純虚数なら,絶対値は基本群で不変ということを用いて個数関数の増大度を計り,対数微分の補題に結びける道筋を得た.ただ厳密に証明することには時間を要する. ネバンリンナ理論の適用は,ドメインが複素円板ということにより,例えば有限測度の集合を除いて,といった表現に意味を持たせるための工夫を要する.これはスケール変換で解消するが,簡単ではない. このように多くの箇所で初めての試みを要し,アイディアと緻密な計算が必須となるので,H29年度はしっかりこれに取り組んで結果をだしたい.
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Causes of Carryover |
H28年度に研究を達成し,国際研究集会を開催予定であったが,当課題を解決したという他の論文が現れたため,その検証に時間を要した.現時点でその論文に疑義があり,我々の研究を継続する意義が出てきたので,引き続き問題の解決と,関連分野の研究会開催に繰り越し額を使いたい..
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
共同研究をおこなっている小林亮一名大教授との研究打ち合わせ旅費,及び,成果が確実になった時点での研究会開催を計画している.打ち合わせのための旅費は,数回で計50万程度,研究開催に同額程度を見込んでいる.
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