2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26610015
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 亮一 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (20162034)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 代数的極小曲面 / Osserman理論 / 量子化 / 放物型局所化原理 / 周期条件 / 対数微分補題 / Nevanlinna理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
代数的極小曲面のOsserman理論を量子化.Osserman理論では代数的極小曲面のGauss像の面積と双曲面積の比が基本的である.本研究では代数的極小曲面の基本群の普遍被覆面(単位円板)への作用に関する基本領域の集団に置き換え,半径rの円板と交わる基本領域の個数を交わりのGauss像の面積を半径rの円板の双曲面積で割った量を重みとして数え上げる分配関数を導入した. プランク定数の働きをするのは1-rである.rを1に近づける極限をとってから数え上げるとOsserman理論が再現する.本研究で言う量子化とは先に数え上げを実行してからrを1に近づけて漸近挙動を研究することである.基本領域は境界に近づくとEuclid的歪みがないものとあるものが潜在的に無数現れる.歪みがない基本領域の生成は実数直線に整数点から始めて分母が一定の大きさの分数が生成される過程になぞらえられ,歪みがある基本領域の生成は分子を一定に保ったまま分母を大きくしていく過程になぞらえられる. この2つの過程を幾何的に区別する原理として放物型局所化原理を定式化した.この原理を円板上の有理型関数に対するネヴァンリンナ理論に応用して量子化を研究した.その真髄は代数的極小曲面の周期条件を理論にどのように組み込むかである.Weierstrass表現公式をランダム化したものから円板上の正則関数H(z)を構成しGauss写像が極をとる点におけるH(z)の値から成るP1の因子をDとする. 組(exp(H),D)は周期条件の情報をすべて持つ.Gauss写像がNevanlinna理論的にDを最大限近似することが放物型局所化から従うからexp(H)はDを最大限近似する.最大限近似の状況で最良評価を与えるNevanlinna理論の対数微分補題を組(exp(H),D)に適用することによって知りたかった漸近挙動がどうなっているか理解した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の目標は代数的極小曲面のGauss写像の除外値集合が高々2点しかないという予想を解くだった.しかし研究を続けるうちに自分はOsserman理論の背景にある分配関数を計算しているのだということに気づいた.この観点に立ってみると,自分が何をやっていてどういう方向に研究を進めたらいいのかが急に見えるようになった.この発見をきっかけに,本研究はOsserman理論の量子化問題に変質していった.たとえば本研究では放物型局所化原理にともなって現れるユークリッド的歪み強度が漸増する基本領域の放物列というものが現れ,「各放物列に付随する量の全放物列にわたる和を計算せよ」というタイプの問題がいたる所に現れる.たとえば組(exp(H),D)に対数微分補題を適用できることを証明するときにこの状況が現れる.この問題に対し放物列が始まるEuclid的歪みがない基本領域のEuclid直径で放物列を整列させて数え上げる方法を確立した.概要で述べたexp(H)という代数的極小曲面上の超越多価関数は周期条件があると絶対値が1価になるという特別な性質を帯びる.これを普遍被覆面に持ち上げた正則関数の特性関数の増大度が-log(1-r)のオーダーならばeffective対数微分補題が成り立つ.実はGauss写像も同様の増大度評価を持つことが示される(量子化Cohn-Vossen不等式).このような増大度評価は放物型局所化原理からの帰結である.このロジックを発見したことは本研究の最大の成果である.(exp(H),D)にeffective対数微分補題を適用するとWeierstrass dataと基本群作用の言葉で表される2本の関係式が現れる.量子化された周期条件と言える関係式である.この関係式からGauss写像の除外値集合は高々2点しか含まないことが導かれる.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の過程でAhlforsの1943年の論文 The theory of meromorphic curves を検討して本研究との相性のよさに驚いた.本研究の過程で発見した放物型局所化原理は解析的には対数微分補題につながっている一方で代数的には実代数的無理数の有理数によるDiophantus近似に関するRothの定理とSchmidt部分空間定理につながる.この発見はNevaminna理論における対数微分補題とDiophantus近似の類似性に関する新規の発見と思われる.Ahlforsの方法の非線型の設定への一般化はAhlfors自身の問題提起に始まる課題であるが未だに未解決の難問である.今後の課題は放物型局所化原理がNevanlinna理論とDiophantus近似の両方の側面を持つことをきっかけにして,2つの理論を幾何的に統一できないかを考えたい.このとき放物型局所化原理が鍵のひとつであることは大いにあり得ることである.これに加えて,代数多様体を冷却したときの正則曲線のジェットと近似対象の因子を局所的に線型化する局所座標系の座標変換の反応の違いを利用するというアイディアを導入したいと考えている.その理由は,非線形の設定では正則曲線のジェットのロンスキアンは定義できない概念であるが,近似対象の因子と正則曲線がぶつかる所ではその零点の個数を数えたり近似するところでは因子のジェットへの近似を測定できるのではないかと考えれるからである(これは,方程式はないが根の個数が数えられ,近似解を論じられるという状況をつくることである).
|
Causes of Carryover |
本研究が当初の目的を超える広がりを持ち始めたため,オーガナイザの一人である国際研究集会GeoQuant 2017 での研究発表を行うと同時に,関係する研究者を招待するための旅費サポートが必要になった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
GeoQuant2017への参加と招待講演者の旅費サポート.
|
Research Products
(3 results)