2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26610018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾畑 伸明 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10169360)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スペクトル解析 / 量子確率論 / 複雑ネットワーク / グラフのスペクトル / 振動子系 / 量子ウォーク / 有向グラフ / 直交多項式 |
Outline of Annual Research Achievements |
巨大なグラフ、成長するグラフ、ランダム・グラフ、辺の向きや頂点加重など付加構造をもつものを複雑ネットワークと総称する。本研究では、これまでに構築してきた量子確率論による独自の視点や解析手法をもとに、複雑ネットワークのスペクトル解析を軸として、ダイナミクスのスペクトル的特徴付け、ダイナミクス統計量によるネットワークの粗構造・階層構造の推定、およびスペクトル・モデルの応用を目的とする。本年度は、量子確率論的な手法の発展を中心に研究の進展を見た。 1. 複雑ネットワーク上のダイナミクス 有向グラフ上の結合振動子系の協同現象を数学的に扱うための文献調査を進めるとともに、グラフのスペクトル分布の具体的計算を蓄積した。特に、マンハッタン積上の結合振動子の解析に際して、隣接行列やラプラシアンの特性多項式の決定や固有値の導出を行った[学会等発表]。もう一つの話題として、量子ウォークの漸近挙動を課題に掲げているが、スパイダーネットに関する既存の成果を一般化して、局在化条件を明らかにする方向で研究を進めている。 2. ダイナミクス統計量によるネットワーク構造 前段階として、隣接行列やラプラシアンのスペクトルを導出するときに、有効であった量子分解法を拡張する問題に取り組んだ。既存の手法は1変数直交多項式に帰着するが、これを2変数直交多項式に拡張することが喫緊の課題となっている。2変数直交多項式が満たす漸化式に現れる係数行列の階数と2次元スペクトル分布の台との関係が明らかになってきた[論文準備中]。 3. スペクトルモデルの提案 本研究課題の挑戦的なゴールとして設定しているが、まだ端緒についたところである。量子ウォークの時間発展を記述するユニタリ行列は新たな手がかりになると見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネットワーク上のダイナミクスとして取り上げた振動子系の解析をきっかけとして、マンハッタン積などの有向グラフのスペクトル解析が進展した。一方、量子ウォークに関しては、一般的な枠組みがつかみ難く、やや困難な状況がある。しかしながら、2変数直交多項式に関する具体例の計算が進み「量子分解法」の一般化につながる方向が見えてきたので、全体として、順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果をもとに、具体例の蓄積を継続し、一般論への展開を図る。他分野でも議論されているネットワークスペクトルの研究の現状を把握するために、連携研究者と協力して研究会を開催する。直交多項式を巡っては、海外研究者との共同研究が端緒についたので、さらなる発展のため相互訪問などを行う。
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Causes of Carryover |
国際共同研究への発展を期して予定していた海外渡航を延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際会議等への出席を兼ねて、海外研究機関を訪問して、国際共同研究を進展させる。
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