2014 Fiscal Year Research-status Report
Kardar-Parisi-Zhang 方程式の確率解析的研究
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26610019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
舟木 直久 東京大学, 数理科学研究科, 教授 (60112174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹本 智弘 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (70332640)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 確率論 / 解析学 / 統計力学 / 数理物理 / 関数方程式論 |
Outline of Annual Research Achievements |
Kardar-Parisi-Zhang (KPZ)方程式の研究は、昨年のICMでフィールズ賞受賞者を出すなど、大きな注目を集めている。KPZ方程式は、界面成長を記述するHamilton-Jacobi 型の非線形確率偏微分方程式である。この方程式には、界面の高さ関数の空間微分(界面の傾き)の2乗を含む非線形項と時空ホワイトノイズとよばれる確率項(揺動項)が現れるが、両者は協調せず、そのままでは意味のある解を持ち得ない。つまり、非線形項は発散(無限大)を含むのである。 しかし、その(形式)解のCole-Hopf 変換を考えると、乗法的確率熱方程式に帰着される。研究代表者の舟木は、このようにして得られるCole-Hopf解の不変測度について調べた。その主要なアイデアは、不変測度を本質的に変えないようにノイズおよび非線形項の近似列を構成することにある。この近似列に対する極限操作の下で、KPZ方程式に特有の定数 1/24 が現れることを発見した。さらに、近似のレベルではあるが、この結果を多成分がカップルしたKPZ方程式へと拡張することに成功した。 研究分担者の笹本は、q-TASEPと呼ばれる排他過程の一般化として、粒子の移動確率にq-Hahn直交多項式の重み関数が現れる過程を導入し、その性質を議論した。また非対称な反射型相互作用を持つブラウン運動粒子系に対し、双対性を用いることにより、カレントの母関数がフレドホルム行列式の形に書けることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
KPZ方程式の近似列の構成を通し、極限でKPZ方程式に特有な定数、すなわち界面成長速度 1/24 が現れることを発見したのは大きな成果である。さらに、多成分がカップルしたKPZ方程式への拡張にもある程度成功した。ただし、多成分KPZ方程式については、Cole-Hopf変換の手法は適用できず、極限操作を行うことは今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず第一に、近似列の極限において KPZ 方程式に特有な定数 1/24 が現れる背景についてより詳しく探る予定である。次に、マルチンゲール問題による設定、いわゆる確率エネルギー解についても調べる予定である。これは、フィールズ賞受賞者の Martin Hairer 氏による正則性構造理論から得られる解と同等のものを定めると予想されるが、そのためにはマルチンゲール問題の解の一意性を示すことが重要である。それを目指して研究を進める。
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