2014 Fiscal Year Research-status Report
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26610024
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
盛田 健彦 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00192782)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 葉層付き空間 / 各葉拡散過程 / 確率解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で扱う葉層付き空間は、葉毎には十分な滑らかさと有界幾何条件を備えた多様体ではあるが、葉に対して横断的方向については連続性以上のものは仮定されておらず、空間全体としては高々距離空間に過ぎない。一方、研究協力者である須崎 清剛 氏の先行研究によって、葉毎に滑らかな2階楕円型偏微分作用素を生成作用素とする拡散過程を確率微分方程式の強い意味の解として求めることができる。その解は葉層付き空間をパラメータとするWiener汎関数とみなしたとき、各葉においては十分滑らかであるが,葉に対して横断的な方向については確率連続性以上を期待することはできない。初年度は葉層付き空間上の確率微分方程式の解に対して、多様体上の確率微分方程式の解に対して発展して来た解析的手法がどれくらい適用可能なのかという問題に対して、例を用いて確認する作業に多くの時間を割いた。最も簡単な例として、底空間をコンパクト距離空間とし,その上の位相力学系から定まる写像トーラスを扱った。これについても須崎氏による力学系と各葉Brown運動の調和測度を具体的方法で対応づける基本的な先行結果がある。その枠組みを利用した定式化によって調和測度に関してほとんどすべての出発点に関する中心極限定理が不変原理の形で成立することを示した。さらに、極限過程が非退化な Brown 運動となるための幾つかの十分条件を得た。その他、一般化されたKronecker葉層空間を導入して、Ledrappierが20年程前に研究した負極率閉曲面上の測地流の定める葉層多様体上の各葉Brown運動に関する中心極限定理との比較を行った。これらの結果とそれ以前から続けていた須崎氏との共同研究とを統合し、共著論文 ” Central Limit Theorem for Leafwise Brownian Motions on Mapping Tori に追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様体上の確率微分方程式の解に対して発展して来た解析的手法が、どれくらい葉層付き空間上の確率微分方程式の解に適用可能なのかという課題に対し、例を用いて確認するという作業については、本研究以前に進めて来た須崎氏との共同研究と統合・整理し、共著論文 ” Central Limit Theorem for Leafwise Brownian Motions on Mapping Tori" にまとめたものが Tokyo Journal of Mathematics に掲載決定している。 各葉拡散過程を Dirichlet 形式により構成するという課題については特に時間を費やしてはいないが、この部分については既存の理論の類似が成立する目処が立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度からは、Malliavin 解析の類似 (以下、各葉 Malliavin 解析という) に関する研究に入る。まず、通常の Malliavin 解析における Wiener 汎関数の滑らかさに関する現在までの結果についての資料収集を行っておく。葉に横断的な方向に連続的に変化する Wiener 汎関数の非退化性の条件として適切なもの、Malliavin の非退化条件の類似について検討し、いわゆる、部分積分公式を準備する。 次に、確率論によらず解析的に証明できることではあるが、葉毎に非退化な各葉確率微分方程式の場合について、推移確率が葉毎に滑らかな密度関数をもつことの確率論的証明を与える。同時に、Gauss 型評価についても確認しておく。パラメータ付きの各葉 Wiener 汎関数に関する漸近展開についても基本的な結果を準備しておく必要があるが、3年目にずれ込むことも十分あり得る。Gauss-Bonnet-Chern の定理の類似を考えるにあたって各葉非退化確率微分方程式で事足りると思われるが、余裕があれば、Hoermander の非退化条件を満たす各葉退化2階楕円型偏微分作用素に対応する熱核が葉毎に滑らかであることを各葉 Malliavin 解析によって証明するための準備を整える。
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Causes of Carryover |
当初計画では、初年度において、確率論、力学系、幾何学などに関連した図書を購入する予定であったが、研究協力者の旅費を充実させる必要が生じたため、旅費の支出を増やし、物品費への支出を抑えることとした。経費として合計はほぼ予定通りではあったが、3万円あまりを次年度使用額にまわすこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用にまわす額については、各葉拡散過程に関するMalliavin 解析の類似の研究の開始に伴い必要となる資料および確率論関係図書の購入経費に追加したいと考えている。
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Research Products
(1 results)