2014 Fiscal Year Research-status Report
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26610033
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金井 政宏 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 助教 (40515821)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 交通流 / 非平衡系 / マスター方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,非平衡統計力学系に対して次のような数学的なアプローチを試みる.非平衡系の時間発展規則をマスター方程式により導入する方法は一般的であるが,私は超幾何関数論に基づきマスター方程式が厳密解を持つような系の発見と分類を最終目標とする. 本年度は,非平衡系のモデルとして知られる非対称単純排他過程(ASEP)の可解性を,別のやはり可解であることが知られているMisanthrope過程により解析する方法を提案した.ASEPは境界の影響によって相転移を起こすという点で通常の平衡系とは全く異なるのであるが,一方で,周期境界条件の下でも定常な粒子流を持つことが知られている.私は今回,両端を持つ場合と周期境界の場合のASEPを同時に実現するような系を,Misanthrope過程を改変することによって構成することに成功した.この結果,全く一様な系であっても自発的に対称性が破れてあるサイトに粒子が集中するという凝縮現象をシミュレーションと理論計算の両方で確認することが出来た.この研究成果は,単著論文 Realization of the Open-Boundary Totally Asymmetric Simple Exclusion Process on a Ring, J. Stat. Phys. 157 (2014) 282--294 にまとめて発表されている. 次年度は,本年度に続けてASEPを拡張したいくつかのモデルについて,そのマスター方程式が厳密に解けるための条件を探っていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で,非平衡系の本質を非常に単純な形でモデル化していると考えられている非対称単純排他過程について,その相転移の様子を研究するための新たな手段を準備することが出来た.ここで得た知見は,より複雑な系の研究に応用できると期待できる.従って,研究は順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
ASEPあるいはMisanthrope過程など,これまでに重点的に研究されてきた非平衡系のモデルでは,マスター方程式が比較的簡単な形のものと表示が複雑なものが混在している.そして,モデルごとに解法は確立しているものの,その背後にある数理は統一的には解明されていない.今後は対称性の観点からマスター方程式を詳細に調べていきたい.この方針は自然に最先端の超幾何関数論につながるものと信じる.
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Causes of Carryover |
物価の変動により予定購入額との差額が生じたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文房具などの消耗品の購入を計画している.
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Research Products
(7 results)