2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26610033
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金井 政宏 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 特任研究員(上席) (40515821)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 交通流 / 非平衡系 / マスター方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,非平衡統計力学系に対して次のような数学的なアプローチを試みる.すなわち,非平衡系の時間発展規則をマスター方程式により導入する方法は一般的であるが,私は超幾何関数論に基づきマスター方程式が厳密解を持つような系の発見と分類を最終目標とする. 昨年度は,非平衡系のモデルとして知られる非対称単純排他過程(ASEP)の可解性を,やはり可解なモデルである人嫌い過程(misanthrope process)により解析する方法を提案した.この研究では,従来は区別されていた開放系の境界条件と周期境界条件とを選択的に実現する系を構成することができた. 今年度は,可積分系の方程式であるmKdV方程式と,交通流の基本的なモデルである時間遅れを持つ最適速度モデルの対応を軸に,渋滞現象に相当する衝撃波の厳密解を構成した.さらに,この方程式を離散化・超離散化し,同時に,対応する厳密解も構成した.この結果は現在投稿中で,原稿はhttp://arxiv.org/abs/1509.07861に公開されている. 最終年度となる来年度は,これまでの研究で得られた知見を活かして,より抽象化された非平衡系での厳密解の構成を行い,最終目標である可解な非平衡統計力学系の分類を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,やや応用を意識した研究となった.すなわち,非平衡系のモデルで記述される交通流のダイナミクスを取り上げ,その主要な現象である渋滞を再現する厳密解を研究した.このやや特殊な系で得られた知見は,今後の一般的な系の研究に活きてくると確信している. 本年度の研究成果は現在投稿中である. 原稿は以下のように公開している: Keisuke Matsuya, Masahiro Kanai, Exact solution of a delay difference equation modeling traffic flow and their ultra-discrete limit http://arxiv.org/abs/1509.07861
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までは個別の系について研究を行ってきた.これらは若干の意味の違いはあるが,それぞれに可解と言ってよいものであった.そして,その背後にあるのは可積分系の構造のように思える. 一方で,可積分系の方程式は超幾何解と呼ばれる特殊解を有することが知られている.この事実は,超幾何関数を解に持つようなマスター方程式の存在を暗示しているように思われる.次年度は衝撃波解を超えて超幾何解を中心にして今年度と同様の研究を進めていくのが最初の方針となる.
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Causes of Carryover |
研究集会等の旅費として予算計上していたが,研究集会の開催地が近距離に変更となったため,余剰となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
大規模な数値計算のためのコンピュータおよびソフトウェアの整備に充てる.(スペックをグレードアップする予定)
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Research Products
(1 results)