2014 Fiscal Year Research-status Report
複素数体上の完備直交t-デザイン系の存在・構成問題とその応用
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26610036
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神保 雅一 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (50103049)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 組合せデザイン / 球面デザイン / 量子ジャンプ符号 / t-SEED / t-MOD |
Outline of Annual Research Achievements |
t-MODのデザインの数の上界がAlber, Beth, et al. (2003)により与えられており,t-MODが取りうる値を0, 1に限定した場合にはt-MODはt-SEEDと呼ばれるが,平成26年度は,上界を達成するbinary t-MOD(t-SEED)は本質的に,会合数1のt-デザインのlarge setでなければならないことを示し,その結果がDesigns, Codes and Cryptologyに掲載された. この結果に加えて,論文では,t-SEEDの逐次構成法も複数与えている.さらに,Stinson and Vanstoneらが1980年代に示した鍵分散暗号への応用についても,t-SEEDを用いた場合の有効性をその鍵の数の多さの観点から示している. その後,t-SEEDをt-MODに拡張して考えることにより,線形代数的手法で,Alber, Beth, et al. (2003)の上界を達成するt-MODの特徴付けを行うことができた.この結果により,上記の論文のt-SEEDとlarge setとの関係を非常にコンパクトに証明することができ,デザインを複素数体上に一般化することにより,classicalなt-デザインの諸性質を数学的により一般化された形でしかもコンパクトに説明できる可能性を示唆していると思われる.また,t=k-1が偶数でブロックサイズがk=(n-1)/2の場合には,上界を達成する完備t-MODが存在しないことが示された.さらに,0,1でない複素数体上の1-MODの例を1つ見出すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上界を達成するt-MODの代数的特徴づけを行うことができ,H26年度に出版された論文の証明をさらにコンパクトに本質を突いた短い証明に昇華させることができた.旧来の組合せ論的なt-デザインの理論を複素数体上のデザインとしてみなすことにより,今後,より数学的な見地から新たな見方へと発展できる可能性があり,その意味で研究が進展している. また,暗号の分野への新たな応用も見出されている点も研究の広がりを見ることができる.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)点の数nが奇数のときの1-MODの構成法:このテーマは平成26年度から継続しているものであり,1-MODの例は見つかっているが,無限系列などの一般的な構成法には至っていない.平成27年度以降は,昨年度に続き,点の数が奇数の場合に本質的に複素数体上での1-MODの構成問題,存在問題の一般的解決法を見出したい. (2)2-MODの存在・構成問題:tが2以上のt-MODについては,非存在を示す結果が,研究代表者及び,海外の研究者らによって得られているが,その存在を示す例は1つも見つかっていない.平成27年度は,上界を達成する完備2-MODの存在・構成問題にも取り組みたい.そのために,点集合Vから1点を除いた導来デザインが既知の1-MODとなるような拡張法を考えたい.この目的のために,計算機による計算が必要であり,大学院生にその計算を依頼したい. (3)完備1-MODとd-距離集合との関係:完備1-MODのn-1個の写像(デザイン)に関するk-元部分集合の値をn-1次元ベクトルとして複素球面上に配置した点集合がd-距離集合をなすか否かを調べたい.逆に,d-距離集合から1-MODが構成できるか否かについても調べてみたい. (4)実験計画・暗号などへの応用:研究代表者らは,A-最適な球面デザインの構成法を与えているが,このような最適デザインと1-MODとの関係を明らかにしたい.また,すでに得られているt-SEEDの鍵分散暗号への応用をt-MODに一般化し,量子鍵共有暗号への応用の可能性を探りたい. 上記の目的のために,海外の研究者の招聘,訪問,国際会議の開催などを通して,研究を発展させたい.
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Causes of Carryover |
H26年度当初は,計算機およびソフトウェアを購入して,計算結果をもとにして,理論的に1-MODの構成法を見出そうとしていたが,年度途中で,別の観点からその非存在を一部,理論的に示すことができた.そのため,計算内容の再検討が必要となり,また,H27年度に研究代表者の転出が決まったために,未解決の部分のチェックの方法を決めてから,新しい勤務地で次年度予算で計算機を導入するのが研究の進展具合から見ても良いと判断した.また,年度後半で,国内の研究者を招へいして,関連知識を得るために人件費・謝金を準備していたが,当該研究者が多忙のため,平成26年度は招聘することができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に生じた約30万円の未使用額は,上記の通り,研究代表者の新任地で本研究遂行に必要な計算機およびソフトウェアを購入し,1-MOD, 2-MODの存在・非存在を調べ,理論的証明の糧となる結果を得たい.
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Research Products
(9 results)