2014 Fiscal Year Research-status Report
多次元ボロノイ非構造格子を用いた偏微分方程式の構造保存数値解法
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26610038
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
降籏 大介 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (80242014)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 構造保存数値解法 / ボロノイ格子 / 偏微分方程式 / 局所保存則 / 大域保存則 / 離散変分導関数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的にそって, ボロノイ格子上における数学的性質、とくに非直交格子形状と微積分則の間に成り立つ局所的関係について一般性を与える数学的理論の模索を行った.まず、二次元ボロノイ格子上で成立する離散ガウス-グリーン則が既にひとつ知られているので、それについて数学的性質の評価と定式化を行った.事前にある程度予測された一般的な評価が得られるとともに、さらなる一般化、すなわち微積分の階数によらない表現が強く必要とされることがこの結果より判明した.また、そのガウス-グリーン則が成り立つ条件下でのボロノイ格子分割における境界条件の処理について、より高精度な表現について研究を進めた.最も単純な処理としては単なるサンプリング,つまりゼロ次近似が使われるが、一般に関数の領域内近似精度よりも境界補間精度が高いと良いことが数値計算の実経験的に知られていることから、こうした評価は必要である. またボロノイ格子上に成り立つ数学的性質について ガウス-グリーン則評価をはじめ有用な知見が既存文献等に存在する可能性を考慮し文献調査を行った.ホッジ作用素の離散化についての研究や外微分形式との関連性について以前よりわれわれが指摘しているように、これらの分野について調査を進めた. また,予定通り,構造保存解法に対する研究交流のために数値解法の専門家が集まる研究集会 KCNADE (Kyoto Conference on Numerical Analysis and Differential Equations) を主催し、国内外から多くの専門家を招待、講演をしてもらうとともに自分らも研究発表を行い、研究交流をすすめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,計画初年度である平成26年度においては最初の計画目標として大きく分けて以下の二つを挙げた. 一つは ボロノイ格子上での局所保存則と函数補間についてその性質と精度についての調査および数学的な評価を通じたさらなる一般化への研究であり、また一つは ボロノイ格子差分による局所則を基礎とした変分原理の離散化である. 一つ目の目標については,ボロノイ格子差分とその補間について十分な調査を行うとともに,離散化に伴い初めて数学的問題として出現する有限領域の境界補間の処理について,その問題としての認識と複数の離散化法を考案する結果を得ることが出来たことから,充分な達成を見たと認識している. また,二つ目の目標については,局所則を実現できることから少なくともそれらを用いた式変形に基づく変分計算が一般的に矛盾なく可能であることが言えるため、これも十分な達成を見たと考える. さらに国際研究集会 KCNADE を主催し、多くの専門家を招待して講演をしてもらうとともに自分も講演を行い離散変分導関数法とその応用、ボロノイ差分について広く議論を行うことができたこと、提案手法の意義が高いことを確認できたことなどから,全体にも充分な達成を見たと認識しているものである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は以下の計画を主に行う. まず,計画初年度の調査と研究の結果をさらにすすめる.特に三次元、四次元など、領域の次元が高くなるにつれてガウス-グリーン則に相当する局所則の離散的な数学的な実現、すなわち、証明を付しての提案が困難になることからこれは大きな挑戦課題になると思われる.これらの実現を通じて局所則を確立し、それに基づいた計算を通じて変分原理の離散化を狙いたい.また高次元領域での境界条件の高精度化は、一般に制約の数よりも自由度のほうが高くなるために解決にあたり指導原理が必要である.これについても離散的な変分原理に基づいて数学的な提案を与えることを目標としたい.もちろん、二次元領域における局所則の一般化と変分原理の離散化についてもより高度な結果を得るべく研究を進める. そして研究計画にあげた第二の目標に対する研究を開始する.これは、有限要素法での形状自由度の理論的な補償として補間誤差を評価するセアの補題に対応するボロノイ格子離散化での類似評価が必要であることから、近年の二次元三角格子上での離散近似評価などを利用してこうした評価を与えようというものである.この二次元三角格子上の関数の離散近似評価は大変数学的に緻密な形で与えられていることから、まずはこの評価とボロノイ格子の双対グラフであるドロネー三角形分割を組み合わせることでボロノイ格子上の関数の離散近似評価を行うことを目的とする.これは地道ではあるが大変に実用的な目的であり、達成されれば多くの問題の誤差について事前に一定の評価を得られる期待が持てる.そしてさらにこの評価を三次元以上への領域における問題に拡張を試みることも本計画に含めるものである.
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Causes of Carryover |
本研究そのものの進展や構造保存数値解法の国内外における研究の隆盛により、計画調書作成時において予測していたよりも国際、国内両方の研究集会等への出席、参加を要請される機会が大幅に増加し、そのために旅費支出が大きなものとなってしまった. これを受け、計画当時に予定していた計算機などのいくつかの機材の購入を次年度以降へと予定を修正したため、その差額分などによって若干ではあるが次年度使用額が生じたものである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先に述べた推進方策に沿って以下のように使用する計画である.まず、高次元空間領域問題に対しする局所則の研究であるがこの証明は困難なことが予測される.そのため、数式処理による計算支援と、予備数値実験が大変重要であるため、WS などの確保とその上で動作するソフトウェアのライセンス料等に研究費をあてる.またドロネー三角分割格子における関数近似評価については二次元三角格子上の関数の離散近似評価の専門家やセアの補題に詳しい有限要素法の専門家との共同研究が適切であり,このための研究集会開催の費用や旅費等を計上する. また平成27年には数値計算等における応用数学者の集まる国際研究集会 ICCAM がドイツで,より大規模な国際研究集会 ICIAM が中国で開催されるためこれらに参加、講演を行い、多くの知見を得ることを目的として予算を振り分ける.
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