2014 Fiscal Year Research-status Report
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26610045
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
土橋 一仁 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20237176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅本 智文 国立天文台, 野辺山宇宙電波観測所, 助教 (30290886)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電波天文学 / データベース天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2MASS点源カタログを利用して形成途上の星団である赤外線クラスタの全天探査を遂行し、それらの座標・星数・長半径・短半径・位置角・潮汐半径等を記載した全天カタログを作成することである。平成26年度中は、2MASS点源カタログを用いた赤外線クラスタの探査用のプログラム開発と、それを用いた赤外線クラスタの探査に取り組んだ。プログラム開発については、次の3つの開発を行った。 [A]アダプティブグリッド法:星数密度分布を測定するためのプログラムである。角分解能を固定して星の数を計測する従来の方法とは異なり、計測する星の数を固定して角分解能をフリーパラメータにし、最終的な星数密度分布図のノイズレベルを一定にする。 [B]高速メディアンフィルター法:星数密度分布図に1平方度程度のメディアンフィルターをかけて、複雑なバックグラウンドを除去する技術である。メディアンフィルータは時間のかかる計算であるため、これを高速化する工夫を行った。 [C]MPFIT法(MultiPle component FITting method): 任意のN個のクラスタを楕円型のキングモデルとrの-1乗則で同時にかつ自動的にフィットして、クラスタの中心座標、星数、長半径、短半径、位置角、潮汐半径などのパラメータを測定するプログラムである。 これらのうち、[A]、[B]については当初計画通りに開発することができたが、[C]の開発については計算速度的に満足できるものを実現することは困難であった。この開発については、高速化のための工夫を現在も続けている。一方、赤外線クラスタの探査そのものについては、全天の星数密度分布図を15秒角のグリッドで描き出し、それに基づいたクラスタの検出を遂行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の[C]のプログラム開発が難航しているため、計画は全体的に多少の遅れが出ているが、計算時間のかかる星数密度分布の計測プログラムや、それを用いた計算は、概ね計画通りに進んでいる。達成度は、概ね順調であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
*本研究の最も重要かつ最低限の目標は、赤外線クラスタの座標と星数を記録した全天カタログを作成することである。平成26年度までの研究では、赤外線クラスタが多数存在すると思われる銀河面ではバックグラウンド(背景の星数)が高く、多数の赤外線クラスタが検出から漏れてしまうことが分かった。現在、この問題を解決するために、クラスタの色を利用してバックグラウンドを下げる(クラスタ以外の星を除外する)方法を模索している。平成27年度前半中にこの新しい方法の実用化の目処をつけ、検出漏れの少ない赤外線クラスタの全天カタログを、年度末までに完成させたい。
これと平行して、本研究ではCfA1.2m鏡・名古屋大学NANTEN鏡・大阪府立大学1.85m鏡等によるCOデータを収集・解析して、赤外線クラスタの母体分子雲コアを同定することを試みる。また、その視線速度から力学的距離と母体分子雲コアの物理量(質量・乱流・サイズ)を測定する。いくつかの赤外線クラスタを詳細に調べてみると、メンバーの星の中には2MASSのみならずWISEやIRASでも検出されているものが複数ある。近赤外線から遠赤外線までのSEDが分かるので、これにRobitaille et al.(2008)の原始星モデルを適用すれば、メンバー星の年齢や質量を推定することができる。本研究では、様々な進化段階にあるクラスタと母体分子雲の物理量を比較することにより、クラスタの進化過程を統計的に描き出すためのデータベースを構築したい。
年度末には一連の成果をとりまとめ、近赤外線のクラスタのデータベースを作成する。
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Causes of Carryover |
プログラミングやデータ解析のための人材を雇用するつもりであったが、当初計画通りの日数を連続して勤務できるポスドクレベルの人材を確保できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
勤務時間を週数時間にするなど、勤務しやすい形でポスドクレベルの人材を確保し、できるだけ年度の前半中に使用する。
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Research Products
(10 results)