2014 Fiscal Year Research-status Report
量子ドット人工原子による電波・赤外分光天文観測の為の次世代超高感度検出素子の開発
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26610049
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子ドット / カーボンナノチューブ / ヘテロダインセンシング / 電波天文学 / テラヘルツ分光 / 地球・惑星科学 / 光赤外検出素子 / 星間現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、天文学において、系外惑星大気、原始惑星系円盤、遠方銀河などからの極めて微弱なスペクトル線の観測の必要性が一層高まってきている。本研究では、分野横断のユニークな共同研究開発により、電波・赤外領域において究極の感度をもつと期待される人工原子カーボンナノチューブ量子ドット(CND-QD)検出素子を応用し、天文学の分光観測や直接撮像のための極限的な高感度検出素子の開発に着手する。 本年は、CND-QD素子へのビーム集光用2次元アンテナを設計し、これに多層カーボンナノチューブ、サイドゲート電極、ソース/ドレイン電極への微弱電流/電圧を供給するパターン実装/インピーダンス整合について検討を行った。これをもとに電子ビーム描画システムや光露光などのリソグラフィー装置のマスクパターンの検討も行った。本パターンの設計評価は、境界要素法と有限要素法による高周波電磁界シミュレータを用いて行った。また、CND-QD素子に供給する2チャンネルの微小電流電圧ソースユニット(分解能:0.1fA)などを、我々の天文/地球惑星観測のための実験開発専用機械式4K冷却システム/超伝導ヘテロダイン検出素子評価系にアセンブリーし、CND-QD素子のDC特性/クーロンブロッケード現象、RF応答/光アシステッドトンネリング現象の評価系の環境を構築した。また、CNT-QDの電磁波応答に関わる物理素過程・動作メカニズムのモデルの開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際のRFパターンまでを実装したチップについて、マスク作成の目処までたてることができた。また既存のマスクによるQD-CNTについて4mm角の試作素子を用いて、実装を踏まえたハンドリングなどを確認する作業も進めることができた。また、fAオーダーの微小電流を供給する専用のDC回路系を構築し、我々のパルス管冷凍機に実装することができた。一方、QD-CNT素子の抵抗が極めて高いことから、RF帯域でのマッチングの最適化にはまだ検討を要している。また、一度に製作できるチップ数が限られるため、実験可能なチップの抽出方法や複数素子の同時製作などのプロセス検討が今後の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) CNT-QD素子を製作し、低振動パルス管冷凍機による受信機評価システムに搭載し、クーロンブロッケードによる非線形電流・電圧特性を確認する 2) ミリ/テラヘルツ波帯(0.1-2THz)の固体CW発振器を2器用いてCNT-QDに照射し、ビート信号の取り出しなど、ヘテロダイン動作/直接検波の検証・確認を行う。 3) アラン分散を測定し、検出器の安定動作時間を調べる。特にCNT-QD素子の出力特性が印加電圧・電流に対して緩やかに変化する最適動作ポイントを探る。冷凍機や周辺機器の温度変化やパルス管冷凍機の微弱振動(振動の変位は数μm以内)に誘起される不安定性なども調べ、必要に応じて受信器システムとしての改善を行う。 4) CNTと電極間の界面における抵抗と接合容量の発生メカニズム、量子ドット部の抵抗値の再現性、トンネリングした励起電子の拡散・フォノンとの相互作用の時定数など、まだ明らかになっていない物理素過程/メカニズムを、上記IF帯域、非線形特性、クーロンブロッケード特性、テロダイン動作特性、直接検波特性を通して紐解き、CNT-QD素子の設計モデルの開発にいかす。
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Causes of Carryover |
マスクの設計の議論に慎重を期したため(歩留まりやインピーダンス整合など)、素子製作が2014年度内にスタートできなかったため、素子の製作費/材料費を繰り越すことなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度の4月現在、素子の製作を速やかにスタートさせており、遅れを挽回し、素子の冷却実験を開始していく予定である。
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