2014 Fiscal Year Research-status Report
ブラックホールの曲がった時空の効果を直接検出する方法
Project/Area Number |
26610050
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
斉田 浩見 大同大学, 教養部, 准教授 (80367648)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ブラックホール / 強い重力レンズ / 光の不安定円軌道 / ポリトロープ星 / グラバスター |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラックホール(BH)の直接検出方法の考案が本研究の目的である。H26年度は、(1)BH疑似天体とBHそのものの観測的な性質の違いを理論的に追及、(2)BHの強い重力レンズ効果を利用したBH直接検出方法の理論的検討、の2つを行った。 (1)の研究では、グラバスターと呼ばれるBH疑似天体の観測的性質を理論的に明らかにした。これは論文として発行済みである。また、非常にコンパクトな球対称静的ポリトロープ星がBHと観測的に区別できるかどうかも理論的に検討し、十分精度の高い観測で区別できることを明らかにした。これは現在2編の論文にまとめて投稿中である。 (2)の研究では、回転BH(カーBH)近傍の光源から発せられた光が、遠方の観測者にどのような時系列変化で見えるかを理論的に追及した。そして、その観測量の計算式を導いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展していると考えた理由は、上記の「研究実績の概要」で述べた(2)の研究において、回転BH近傍での発光によって遠方の観測者に届く測定量の理論的な計算式が構成できたからである。なぜなら、当初の研究計画段階では無回転BH(シュバルツシルトBH)の場合を先に考えるつもりであったが、理論的な考察の結果、始めから(H27年度以降に行うつもりだった)回転BHの場合で定式化を行ったからである。なお、この理由だけなら「当初の計画以上の進展」と言えるかもしれないが、一方で数値計算のプログラミングで解決すべき問題が発生しているので、「おおむね順調」と考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
回転BH近傍の発光によって遠方の観測者に届く測定量の理論的な計算式は導いたので、今後は、パソコンを使った数値計算で測定値を具体的に計算していく。特に、現実的と思われる回転BHと発光源の配置を想定して数値計算を行い、現在(あるいは近い将来)の天文観測技術で取得可能な測定値が予言できるかどうかを検討する。 H27年度には、BH周辺の環境は発光源以外はクリアであるという(ある種の理想的な場合)を想定し、H28年度には周辺環境をもっと現実的にプラズマガスが取り巻く場合などを想定したい。 なお、この研究を進めるにあたって、天文観測の専門家(研究協力者)とも議論を重ねていく。
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Causes of Carryover |
理由は二つある。一つ目は、外国で開催される研究会に参加する予定だったが、本務の都合で参加できなくなったため未使用の旅費が発生したこと。二つ目は、斉田も世話人に加わっている研究会において本研究計画の参考になる研究者を招待したのだが(専門知識の提供のため招聘)、その旅費等の多くを先方の自己資金で賄いたいと申し出を頂いたため、謝金の支出が抑えられたこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画はおおむね予定通り進んでいるので、本務都合をつけて、外国の研究会でも研究成果発表を行っていきたい。また、謝金等の支出が抑えられた分は、数値計算用のパソコン環境の充実に充てて、より効率的にBH直接検出の観測量の理論計算を進めていきたい。
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