2014 Fiscal Year Research-status Report
電子ビームによる短寿命不安定核の光吸収断面積測定新手法の開発
Project/Area Number |
26610053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
須田 利美 東北大学, 電子光理学研究センター, 教授 (30202138)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | γ線吸収断面積 / 短寿命不安定核 / SCRIT法 / 仮想光子 / 巨大共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は、最もクリーンな電磁プローブである電子ビームを使用した短寿命不安定核のγ線吸収全断面積を双極子巨大共鳴を含む広いγ線のエネルギー領域にわたり測定し、断面積のエネルギー依存性から不安定核の形状を決定することにある。本萌芽研究では、この前例のない研究を行うための新測定手法の開発である。短寿命不安定核のγ線吸収断面積は、電子ビームやγ線による測定が不可能だったために反応メカニズムに問題を含む重イオン衝突クーロン散乱過程を利用した測定のみが行われてきた。この重イオンビームによる測定の場合、高エネルギーγ線に相当するクーロン散乱確率は非常に小さく、巨大共鳴領域を覆うことは不可能であった。 私はこの壁を破りクリーンな電磁プローブである電子ビームを利用した測定法の開発を進めている。これは不安定核の電子散乱実験を実現するために、科研費(S)(代表者:須田利美、H22~26年度)で進めているSCRIT法の応用で可能になる。大角度に散乱される電子散乱と違い、不安定核標的を励起し超前方(~0度)に散乱する電子を加速器内部で測定することで、γ線吸収断面積を決定しようとするものである。 本年度は、科研費(S)の研究と平行して、SCRITによる不安定核標的生成の高度化作業を行った。高効率化を目指し、SCRIT電極の製作と設置を行った。新測定法開発のために使用を検討しているXeガス(安定核)であれば、十分な収量が期待できるルミノシティー、10^27 /cm2/s、が達成出来ると考えている。到達ルミノシティーテストは平成27年度中に実施予定である。 平行して、開発実験のための信号処理系を含む測定系を準備を進めた。加速器の偏向電磁石内でエネルギーを失い超前方に散乱した電子の測定するためのファイバーシンチレータ並びにマルチアノード(4x4)光電子増倍管からなる検出器の製作を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この開発研究には、電子ビームと標的となる不安定核の衝突ルミノシティー、10^27 /cm2/s 、が必要である。SCRIT法による不安定核の電子散乱実験を行う施設はすでに稼働を開始しており、予備的な実験の結果、このルミノシティーは達成可能であることは示されている。より高いルミノシティー達成を目指し、いままでの研究で明らかになった課題を解決すべくSCRIT装置の一部(標的イオンを捕獲するための電極)を再設計し設置した。設置後、すでに数ヶ月に及ぶ加速器の焼きだしや枯らし運転を行い実験を再開するに必要な超高真空度は達成している。平成27年度には安定なXeガスイオンを利用した実験を開始できる状況である。 検出器については、加速器偏向電磁石内に挿入するファイバーを利用した検出器の検討は終了し、光電子増倍管やケーブルなどは購入済みである。信号処理用の電子回路系も準備が出来ており、上記実験が開始できれば研究を開始できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、高度化したSCRIT装置を用いて安定核Xeガスイオンを標的に到達ルミノシティー測定を実施し、目標のルミノシティ、 10^27 /cm2/s 、が達成出来れば、γ線吸収断面積測定新手法の開発実験を開始する。標的原子核を励起し超前方に散乱された電子の測定には、標的原子核で制動輻射γ線を放出しエネルギーを失った電子がバックグランドとなる。制動輻射過程は約1000倍断面積が大きく、如何に効率的に制動輻射過程事象を除去するかが重要である。そのために、SCRIT標的下流に設置したγ線検出器で制動輻射γ線を検出し、バックグランドの除去を予定している。すでに今年度、枯らし運転中に便乗し、SCRIT装置内に準備した極細タングステンワイヤーを標的としてルミノシティ が約10^27 /cm2/s 時にγ線検出器が正常に動作することを確認している。従って、本研究の遂行には大きな困難はないと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は主に東北大にてシミュレーションを含む研究計画検討、検出器製作作業、電子回路テスト等を行ったために、想定より旅費支出が少なかった。さらに、申請書では電子検出器からの信号処理用のNIMモジュール16chディスクリミネータ(1,600 千円)の購入を予定していたが、廉価で高性能な電子回路導入の可能性が判明したため昨年度内の購入を止め現在検討を進めている。そのために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
検出器からの信号処理用電子回路は現在検討中。約100千程度となる見込み。その他、次年度使用額は、実験旅費、不足分のケーブルやコネクター購入、その他雑費に使用予定である。
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Research Products
(5 results)