2014 Fiscal Year Research-status Report
多波長宇宙論データの同時解析法の開発と宇宙の暗黒成分の究明
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26610058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 昌広 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (40374889)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダークエネルギー / ダークマター / ニュートリノ / 宇宙の構造形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
広天域の宇宙背景放射、銀河イメージング・分光サーベイ、またX線衛星による全天サーベイ計画など、世界中でダークエネルギーの探査を目的とした宇宙論サーベイが稼働中、あるいは計画中である。これら多波長の宇宙論データを組み合わせ、ダークエネルギー、宇宙論パラメータの制限を改善する、また無バイアスな制限を引き出すことができる手法の開発は極めてタイムリーなトピックである。この背景のもと、本研究者は、宇宙論の研究で著名なシカゴ大学のScott Dodelson教授、英国のマンチェスター大学のSarah Bridle教授と共に世話人を務め、伝統ある米国のアスペン物理センターで、H26年度7月に「Combining probes in cosmology surveys」研究会を開催した。世界中で宇宙論の理論研究、また大型宇宙論サーベイを牽引している研究者を一堂に会し、活発な議論の場を持つことができた。これらの議論を受け、異なる波長、手法の宇宙論データを組み合わせ、宇宙の構造形成モデルを制限する手法を開発することに成功した。これまでは、各波長、各宇宙論データの内部に閉じた研究が活発にされていたが、これらの様々なデータを横断的に組み合わせ、宇宙論研究を展開するという新たな視点、流れをもたらすことができた。また、開発した宇宙論手法を実際の観測データに適用し、ダークマターの総量、また現宇宙の構造形成の成長度合いを表すパラメータを制限することに成功した。これらの研究は業界でも注目されており、今後もさらに活発に議論され、様々な相乗効果が得られると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多波長、異なる手法の宇宙論データを組み合わせ、宇宙論パラメータを制限する手法を開発することができた。また、実際に開発した手法をスローン・ディジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)および Canada France Hawaii Telescope Survey (CFHTLenS)のデータに適用し、手法的には銀河のクラスタリング解析と重力レンズ効果の測定を組み合わせることで、宇宙論パラメータを制限することに成功した。この結果は査読論文に受理されており、H27年度中に掲載される予定である。このように、理論モデルの開発、新宇宙論手法の開発、また実際のデータへの適当という三段階の研究が達成し、当初予定したよりも順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、さらに多波長、多手法を組み合わせた方法論を開発し、実際のデータへの適用を目指す。これを行うのには、N体シュミレーションに基づく宇宙論データ(銀河など)の模擬カタログを有機的に用いながら行う。最終目標は、すばる望遠鏡の新広視野カメラHyper Suprime-Cam(HSC)と広視野多天体分光器計画 Prime Focus Spectrograph(PFS)のデータを用いた宇宙論に適用することであるので、引き続き現在入手可能な宇宙論データで準備研究を行う。
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Causes of Carryover |
本年度に計画していた研究を進めるにあたり、少額の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額を次年度に繰り越し、引き続き本研究が目指す研究目的を達成するために必要な経費に計上する。
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Research Products
(16 results)