2015 Fiscal Year Research-status Report
多波長宇宙論データの同時解析法の開発と宇宙の暗黒成分の究明
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26610058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 昌広 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (40374889)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダークエネルギー / ダークマター / ニュートリノ / 宇宙の構造形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
広天域の宇宙背景放射、銀河イメージング・分光サーベイ、またX線衛星による銀河団サーベイなど、世界中でダークエネルギーの性質の解明を目的とした宇宙論サーベイが稼働中、あるいは計画中である。これら多波長の宇宙論データを組み合わせ、ダークエネルギー、宇宙論パラメータの制限を改善する、また系統誤差に影響を受けない制限を導出することを可能にする手法を開発することを目的とする。本研究者は、米国の宇宙背景放射、銀河サーベイの研究で著名なプリンストン大学のDavid Spergel教授らと共同研究を進め、スローン・ディジタル・スカイ・サーベイ (SDSS) のデータから測定した重力レンズ観測量とクラスタリング統計量を組み合わせ、銀河バイアスの不定性を除去する手法を開発した。また、宇宙論の理論研究で著名なシカゴ大学のWayne Hu教授とも共同研究を進めた。N体シミュレーションは宇宙論の研究では必要不可欠になっているが、周期境界条件による不定性である、シミュレーションの体積を超えるゆらぎ(重力)の影響を取り入れる手法を解決した。この手法により、広天域サーベイ領域を超えるゆらぎの影響を考慮することが可能になり、逆にそのゆらぎを測定できる可能性を指摘した。大波長スケールのゆらぎは宇宙初期のインフレーションの物理を反映していると考えられ、この研究は注目を集めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
N体シミュレーションは、宇宙の非線形大規模構造の物理を調べる必要不可欠な手法になっている。このN体シミュレーションでは周期境界条件を課す必要があり、つまりN体シミュレーション体積を超えるゆらぎ(重力)の影響を無視する不定性が知られていた。この問題に着目し、我々はN体シミュレーションを超えるゆらぎの影響を取り入れる手法を開発した。我々の研究は、約30年間に及ぶ宇宙論のN体シミュレーションの研究史で、初めて定量的に示した結果であり、その意義は大きいと考える。逆に、この手法を用いることで、大波長スケールのゆらぎが宇宙の構造形成に及ぼす影響を調べることが可能になり、またその理論モデルと観測データを比較することで、大波長スケールのゆらぎを制限することが可能になることを指摘した。大波長スケールのゆらぎは、インフレーションなどの初期宇宙の物理をよりクリアに反映していると考えられており、その応用、さらなる研究の発展が期待できる。H27年度中には査読雑誌に10編の論文を発表している。これらの理由で、計画していた研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した多波長宇宙論データから得られる宇宙論統計量を組み合わせる手法をさらに発展させる。特に、分光銀河サーベイの銀河の3次元分布から、N体シミュレーションで正確な予言が可能なダークマターハローの分布を復元する手法を開発する。クラスタリング統計量、赤褒貶歪み効果、重力レンズ、宇宙背景放射のスニヤエフ・ゼルドヴィッチ効果、X線放射などダークマターハローについては様々な宇宙論観測量が得られるが、それらを組み合わせ、宇宙論パラメターを制限する手法を開発する。また、上述したN体シミュレーションの手法をさらに発展させ、これらの観測量に及ぼす大波長スケールのゆらぎの影響を定量的に調べる。N体シミュレーションを多数走らせ、それらから宇宙論観測量の理論予言をデータベース化し、この研究で開発した手法を実際のデータに適用する準備を進める。
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Causes of Carryover |
当初計画していたよりもノートパソコンが多少安価で購入できたこと、また共同研究者の招聘に必要な旅費についても予算について若干の誤差があったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画する研究については、共同研究者と進めるので、関係する研究者の招聘、また先方研究機関への出張などに使用する計画である。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] Connecting Halo (peak) and Galaxy2016
Author(s)
Masahiro Takada
Organizer
Statistics of Extrema in Large-Scale Structure
Place of Presentation
Leiden University, Leiden, the Netherlands
Year and Date
2016-03-07 – 2016-03-11
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Halo bias2015
Author(s)
Masahiro Takada
Organizer
Cosmology and First Light
Place of Presentation
Istitut Astrophsique de Paris, Paris, France
Year and Date
2015-12-07 – 2015-12-10
Int'l Joint Research / Invited
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