2015 Fiscal Year Research-status Report
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26610060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江成 祐二 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (60377968)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 素粒子実験 / 荷電粒子検出器開発 / 先端技術の応用 / ナノテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノテクノロジーを用いた薄膜太陽電池(ソーラーセル)を利用した荷電粒子検出器の開発が本研究の目的である。前年度にソーラーセルの開発状況の詳細把握や基本技術・特性などの把握から、CIGS系の薄膜ソーラーセルが荷電粒子検出に適していると判断した。本年度は実際にCIGS系のソーラセルを製作できる研究機関、または企業を探すのに費やした。最終的には株式会社ソーラーフロンティアからサンプルの提供を受けることができた。年度の終わりにはソーラーセルの測定に移ることができた。 まず、東京大学先端科学技術研究センターにおいて提供されたサンプルセルのI-V特性、量子効率の波長依存性を測定した。その結果は光の波長、400 nmから1200 nmに感度があり、波長 1000 nmまでは量子効率 80%を越える非常に優れたものであった。このソーラーセルを用い、時間幅の短いパルスを照射した時の反応を測定した。これは前年度に準備しておいた光源を使い、光を照射した。信号の読出しにはソーラーセルの特性でもある高い内部抵抗に対応するために、オペアンプを用いた増幅回路を設計した。これにより、LEDを使った光の照射テストではパルスを検出することに成功した。 平行して、宇宙線を用いてソーラーセルの応答を測定するために、シンチレータと光電子増倍管を用いたシンチレーションカウンタを製作、その信号をデジタル化の後、FPGAに入力、ファームウエアで論理回路を組むことによりトリガーを生成するシステムの構築をおこなった。残念ながら、現在までの試行では、ノイズの抑制が充分ではなく、宇宙線のレスポンスはまだ見ることができていない。 これらの結果のまとめとして、3月の日本物理学会 年次大会にて口頭発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の目的であった、ベースとなる技術の選定は早々に達成したが、予想以上にソーラーセルのサンプルの入手に時間を要した。最終的にこの入手にも成功し、またその測定も一通りすることができた。その結果をまとめ、物理学会にて発表できたこともあり、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究を提案した時点で信号が微弱であることは分かっており、その対策が重要なポイントになると予想していた。やはりこの予想は正しく、増幅回路や測定系における誘起ノイズなどが問題となっている。また、光の照射方法にも改善が必要であることが分かっている。最終年度である来年はこの2つの点に大幅な改善を加え、提供されたソーラーセルの詳細理解をしていく。またこの結果を学会で発表、また論文にまとめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初、2年間で研究を完了させようとしていたが、サンプルを入手可能な研究機関、または企業を探すのに時間がかかり、3年間の計画に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
微弱信号の増幅回路の更新・製作、および光照射手法の改善のための光ファイバー購入費用が主な使用目的である。また、最終結果をまとめ、学会などで成果報告、および論文投稿費用も計上している。
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