2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26610062
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山口 昌英 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (80383511)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宇宙論 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙背景放射(CMB)の非等方性の理論と観測の発展等により、ここ数十年で宇宙論は大発展を遂げましたが、それも限界に近づきつつあり、宇宙論のさらなる発展のためには新しい観測手段の開発が喫緊の課題です。中でも、宇宙背景放射のスペクトルの歪みは、非等方性の観測では捉えることが出来ない小さなスケールでの揺らぎの性質を調べられるという点で大きな注目を浴びています。我々は、従来考えられていた宇宙背景放射のスペクトルの歪みを生成する機構とは全く異なる新しい機構を提唱しました。インフレーションにより作られる原始揺らぎとして、密度揺らぎの他に原始重力波(テンソル揺らぎ)があります。この原始重力波により生成された温度ゆらぎがトムソン散乱により減衰され、スペクトルの歪み(化学ポテンシャル)を生成します。この機構は、従来考えられてきた原始密度揺らぎによる生成機構、つまり、密度揺らぎがシルク減衰機構により減衰しスペクトルの歪みを生成する機構、とは大きく異なります。この新たな生成機構により、小スケールでの重力波の振幅に制限をつけることが可能になることを示しました。具体的には、もし、スケール不変な原始重力波が存在すると仮定した場合には、現在のPLANCK衛星からの制限を考慮すると密度揺らぎから作られるスペクトルの歪みよりも小さいスペクトルの歪みしか作られないことが分かりましたが、小スケールでより大きな振幅を持つ原始重力波に対しては強い制限をつけることが出来ることが分かりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宇宙背景放射のスペクトルの歪みを生成する新しい機構を提唱することにより、従来の非等方性の観測では調べることが出来ない小さなスケールでの重力波の振幅に制限を与えることが出来たから。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、宇宙論における新しい観測手段を探し、その手法を確立することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画遂行に必要な数値計算を行うポスドク研究員を次年度に雇うために経費の使用を若干控えたから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画遂行に必要な数値計算を行うポスドク研究員を雇う経費として使用。
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Research Products
(1 results)