2014 Fiscal Year Research-status Report
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26610063
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
片寄 祐作 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90323930)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 銀河系外宇宙線 / 空気シャワー観測 / 音波観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高エネルギー宇宙線によって発生する空気シャワーが水中音波で測定可能かどうかを調査している。空気シャワーの中心に分布する高エネルギーコアー粒子群は水に入射すると急速にエネルギーを失い音波を発生させる。本課題では、この音波測定からエネルギー分布を計測し核種弁別等が可能であるかどうかを実験とシミュレーション計算から明らかにすることを目指している。本年度は音波測定方法の基礎研究のため、YAGレーザーを使用した疑似宇宙線の水照射実験を行った。この実験では初めに紫外線吸収剤を混ぜた水を入れた長さ50cm程度の小型実験装置を製作をした。 波長355nmの紫外線レーザーを紫外線透過窓から水中に入射し、市販のハイドロフォンを用いて音圧波を計測し、オシロスコープを使い波形を観測することによって、エネルギー損失と音波強度の関係、音響波形の特徴、周波数特性等を調べた。レーザーのエネルギーは1パルス当たり約10の17乗電子ボルト程度であり、レーザートリガーと同期したバイポーラ信号が確認できた。この事は、水槽壁による音波波形の反射信号の存在等からも確認され、エネルギー損失に伴う熱音響モデルから期待さるような周波数分布の信号が測定可能であることが分かった。 更にこの実験結果を詳しく検証するため、コンピュータによる数値計算からレーザー照射数値実験を実施し、音圧の時間分布等を比較した。 パルス幅については実験と数値計算の結果はほぼ一致した。一方、強度などの不一致もみられ今後に課題となった。実験をより精密化するとともに、数計計算と実験データの比較を単純化するため装置の大型化やレーザー減衰分布の詳細測定など改善策を行い、より詳しい実験を続ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、超高エネルギー宇宙線の測定において音波による新しい方法が可能かどうかを調査することである。課題期間(2年)内に以下の事を実施することを計画している。 ①YAGレーザーによる疑似宇宙線の水照射実験を行い、エネルギー損失と音波強度の関係、音響波形の特徴、周波数特性等を調査する。 ②荷電粒子の水中での電離エネルギー損失と音響信号との関係を調べるため、10の15乗電子ボルト以上の総エネルギーを持つ電子ビームによる音波測定実験を実施する。③標高4000m程度の高所に位置する湖を仮定したモンテカルロ計算から、宇宙線原子核種による到達頻度、エネルギー集中度の差異を調べ、シャワーの水中でのエネルギー損失分布、発生音波伝播について数値計算する。音波測定実験と合わせて宇宙線観測性能を見積もる。 平成26年度は、①の項目について先行研究の方法を参考にして実施した。 このため、半径6cm長さ50cmの円筒管に水を入いれたパイプを用意し、両端にクラレ社の紫外線透過型アクリル板を取り付けた。測定にはRESON社のハイドロフォン(TC4013)を入射位置から30cmのところに設置した。レーザーエネルギー吸収を大きくするためBASF社製の紫外線吸収剤を水に添付した。エネルギーの吸収長は約8cmと見積もられ、ハイドロフォンの手前で音波が発生すると考えられる。実験では音波波形の特徴であるバイポーラの形が測定され、パルス波形の幅は約100ナノ秒程度であった。更に実験結果を詳しく理解するために数値計算によって再現実験を試みた。レーザー吸収率を調整することによって、実験結果と近い形状のパルスは再現できた。これらの結果から水中でのエネルギー損失によって、「熱音響モデル」から予想される音波が発生していることが確認でき、その強度は市販のハイドロフォンを用いても測定可能であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
実験とシミュレーション結果で得られた波形を比較する理解が不十分な点も幾つか見つかったが、れこは、水に混ぜた紫外線吸収剤による吸収率の見積もりが不十分であったことが大きく起因していると考えられる。今後、使用するハイドロフォンの周波数感度や、紫外線吸収剤での減衰効果、壁による音の反響などを詳細に考慮し、実験を精密化する予定である。数値計算では、エネルギー10の18乗電子ボルト程度の宇宙線を想定した空気シャワーシミュレーションを行い、水中でのエネルギー損失と音波分布について調べる。 更に放射線粒子のエネルギー損失に伴う音波と同様な現象の疑似実験を行うため、大強度電子ビーム照射実験を計画しており、そのための実験準備とシミュレーションを現在進めている。
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