2014 Fiscal Year Research-status Report
チェレンコフ検出器によるニュートリノレス二重ベータ崩壊探索の新手法の開拓
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26610068
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松岡 広大 名古屋大学, 現象解析研究センター, 特任助教 (70623403)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニュートリノレス二重ベータ崩壊 / チェレンコフ検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊が見つかれば、それはニュートリノがマヨラナ粒子であることの証拠となり、また崩壊率の測定からニュートリノの質量を決定することができる。したがって、ニュートリノレス二重ベータ崩壊の探索は、素粒子物理学において最も重要な課題のひとつである。本研究では、チェレンコフ検出器を用いて探索を行う、これまでの実験とはまったく異なる手法を提唱する。低背景事象かつ高エネルギー分解能での探索が可能となる。 本研究で提唱する新しい実験手法のセットアップを取り入れたシミュレーションコードを開発した。そのシミュレーションで、期待されるエネルギー分解能は、1.5MeVのベータ線に対して約7%(FWHM)であると見積もった。本研究が進めば、現行の実験よりも優れた感度でニュートリノレス二重ベータ崩壊を探索できると見込まれる。現状ではベータ線の多重散乱がエネルギー分解能を支配的に決めており、セットアップを工夫して多重散乱を小さく抑えることができれば、エネルギー分解能を向上させ、実験感度をより高めることができる。 本手法の原理検証の第一段階として、シミュレーションの妥当性、特にベータ線の多重散乱をよく再現できているかを検証する必要がある。そこで、ベータ線の多重散乱を測定するためのワイヤードリフトチェンバーを設計、製作した。まずはドリフトチェンバーの性能を評価する予定であるが、期待される位置分解能は0.2mm、角度分解能は1mradで、十分な精度でベータ線を測定できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
シミュレーションにより、ベータ線の多重散乱をできるだけ小さく抑えることが探索感度を高める上で重要であることがわかった。そこで、チェレンコフ光を用いるという基本的な実験手法は同じであるが、実験セットアップの計画を一から練り直した。
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Strategy for Future Research Activity |
製作したドリフトチェンバーを用いて、ベータ線の多重散乱を測定し、シミュレーションの妥当性を評価する。その後、チェレンコフ検出器の小型試作機を製作し、実際にベータ線のチェレンコフ光を検出することで、本研究で提唱する新手法の原理を検証する。
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Causes of Carryover |
シミュレーションによる検討を重ねた結果、実験セットアップの計画を申請時から大幅に変更する必要があった。そのため、本研究で提唱する新手法を検証するための試作機を当該年度に製作する予定であったが、次年度に持ち越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度から持ち越しとなった試作機製作に、残りの助成金を使用する計画である。
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