2015 Fiscal Year Research-status Report
チェレンコフ検出器によるニュートリノレス二重ベータ崩壊探索の新手法の開拓
Project/Area Number |
26610068
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松岡 広大 名古屋大学, 現象解析研究センター, 特任助教 (70623403)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ニュートリノレス二重ベータ崩壊 / チェレンコフ検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊(0ν2β崩壊)をチェレンコフ検出器を用いて探索する新しい手法を検証し、将来的には世界最高感度で探索可能であることを示すことが本研究の目的である。0ν2β崩壊が見つかれば、それはニュートリノがマヨラナ粒子であることの証拠となり、また崩壊率の測定からニュートリノの質量を決定できる。 本研究で提唱する手法では、二重ベータ崩壊のソース(100μm厚の82Seを想定)を薄いチェレンコフ輻射体で挟み、互いに逆向きに放出される2本のベータ線(それぞれ1.5 MeVの運動エネルギー)によるチェレンコフ光を、並行平面上に配置した光検出器(ガイガーモード・アバランシェフォトダイオード)でそれぞれ検出し、チェレンコフリングイメージを再構成することでベータ線の運動エネルギーを測定する。リングイメージを歪みなく再構成できれば、運動エネルギーを高分解能で測定できる。さらにチェレンコフ光の発生点も精度良く再構成できるので、背景事象がほとんどなくなると期待される。本研究で目指す分解能(FWHM)は3.0 MeVに対して1%である。 リングイメージを歪みなく再構成するには、輻射体でのベータ線の多重散乱を抑えつつ、できるだけ多くのチェレンコフ光を発生させることが重要だとわかった。それには、低密度かつ高屈折率の輻射体が必要であり、シミュレーションによる検討の結果、0.3 mm厚のメタン蒸気が最適であることを突き止めた。このときエネルギー分解能は、1.5 MeVに対して110 keV、3.0 MeVにして約5%になることがわかった。 本手法は、ベータ線の測定としては画期的で研究を続けていく意義はあるが、0ν2β崩壊探索のためには見直す必要がある。そこで、運動エネルギーを測定するのに、チェレンコフリングイメージではなく、多重散乱が問題とならない飛行時間を用いることにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
チェレンコフリングイメージを再構成してベータ線の運動エネルギーを測定する場合、ベータ線の輻射体での多重散乱によって、期待したエネルギー分解能が得られないことがわかった。そのため、良い感度で0ν2β崩壊を探索するには、運動エネルギーを測定する手法を見直さなければならなくなった。 背景事象を落とす上では、チェレンコフリングイメージを用いるのは有用であるから、本研究の構想をもとに、様々な運動エネルギー測定方法の検証を行った。その結果、ベータ線の飛行時間から速度を求め、運動エネルギーを測定するという別の新しい着想に至った。この手法であれば、本研究で目指す1%の分解能(FWHM)が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ベータ線の運動エネルギーを測定する手法を、チェレンコフリングイメージの再構成から、飛行時間測定に変更した。今後は、飛行時間測定でどの程度のエネルギー分解能が得られるかを実験して検証する必要がある。 エネルギー分解能は主に飛行時間分解能に依存すると考えられるので、光検出器として時間分解能のよいマイクロチャンネル型光電子増倍管(MCP-PMT)を用いる。宇宙線ミューオンを用いて実際にMCP-PMTでチェレンコフ光を測定し、時間分解能を評価する。 また、これまで開発したシミュレーションコードをもとに、手法の変更に合わせたシミュレーションを行い、0ν2β崩壊探索のための最適な条件を検討する。
|
Causes of Carryover |
0ν2β崩壊探索において、ベータ線の運動エネルギーを測定する手法を見直す必要があったため、研究計画に遅れが生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
改良した0ν2β崩壊探索手法を検証する実験を遂行するために、次年度に繰り越した助成金を使用する。具体的には、ベータ線の飛行時間測定における時間分解能を評価する実験のセットアップを構築するために必要な機材を購入する。
|