2014 Fiscal Year Research-status Report
超伝導検出器とSOIピクセル検出器を合体させた新規暗黒物質探索用検出器の開発
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26610070
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石野 宏和 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90323782)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 超伝導検出器 / SOI検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、SOIと超伝導検出器組み合わせた新規な検出器により、暗黒物質探索で大きな系統誤差の一つであるシリコン検出器内のイオン化収率を測定することを目的とする。二つの検出器を融合する上、0.3Kの極低温で動作する超低消費電力SOIピクセル検出器の開発を行う事が挑戦的な研究である。 本年度は、超伝導検出器のデザインを主眼に置いて研究を行った。超伝導検出器として、力学的インダクタンス検出器を用いる。これは、外部からの付与エネルギーにより、超伝導体内のクーパー対が破壊され、力学的インダクタンスが変化する。超伝導体自身でLC共振回路を組む事により、そのインダクタンスの変化を共振周波数の変化として検出する。周波数領域読み出しが自然とできるので、一本の配線で原理的に1000の共振器を同時に読み出すことができる。暗黒物質探索のためには、シリコン基板内で反跳したシリコン原子が周りの原始を揺らすことによって生じるフォノンを検出する。フォノンを効率良く検出するためには、超伝導検出器の立体角(面積)を大きくとる必要がある。一方、面積を大きくすると、超伝導体の体積が増えるために、単位体積当たりの準粒子(クーパー対が破壊されることによって生じる電子)の密度が減ってしまい、感度が悪くなる。また共振周波数も設計値からずれてしまう。そこで、これまで世界で行われたデザインを変更し、LCL共振回路を組んだ。インダクタンスを並列にすることにより、共振周波数を設計値通りに置くことに成功した。高エネルギー加速器研究機構のクリーンルームにおいて、素子を作製し、評価したところ、共振ピークを確認した。しかしながら、共振ピークの鋭さを表すQ値が10000弱とあまり大きくならなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LCL共振器のデザインは、当初フォノンに対する感度がこれまでのデザインの2倍以上上がると計算上では示されていたが、実際には、Q値があまり上がらず、感度も予想通り上がらないことがわかった。デザインを数種類試したが、改善は見られなかった。 一方で、LC共振回路のデザインは、Nbで歩留まり98%以上を達成し、56個のアレイ化に成功している。Alの検出器を用いてフォノンの検出にも成功している。 低消費電力SOI回路の設計・シミュレーション・レイアウトは終了し、5月にサブミットする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく考案したLCL共振回路の開発はあきらめて、より技術的に確立された経験を持つLC共振回路に集中することにする。また、既存のSOI検出器の裏面に超伝導検出器を形成する手法を開発する。筑波大のグループは、SOI検出器の上に、STJ(superconducting tunnel junction)という別種の超伝導検出器の作製に成功している。この技術は、つまり静電気に弱いSOIのMOS回路に絶縁破壊を起こさずに、リソグラフィー技術で超伝導素子を形成することに相当する。この形成技術を、本技術に応用することを試す。SOIピクセル検出器の裏面に超伝導検出器を形成することに成功したのち、SOIピクセル検出器を動作し、回路が破壊されたかどうかをチェックする。また、液体ヘリウム温度(4.2K)で、SOIピクセル検出器作動させる環境を整え、低温下でのSOIのMOS回路およびアンプ回路の振る舞いを詳しく調べる。最終的に超伝導検出器とSOIピクセル検出器を同時に作動させ、イオン化収率の測定を行いたい。
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Causes of Carryover |
H26年度は、極低温測定用SOIのCMOS回路の設計を検討してきた。専門家との議論およびシミュレーションにより、回路設計は終了し、レイアウトも完成したが、当初の計画より若干遅れ、2015年5月にサブミットすることになった。また、0.3Kを冷却する冷凍機にHe-3の漏れが見つかり、超伝導素子の開発進行が3ヶ月ほど滞った。冷凍機は修理され、5月初旬に復帰予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
極低温用SOI回路の試作品が出来上がるのは2015年度10月頃と思われる。また、極低温冷凍機の修理が終了したので、0.3Kの温度で測定するSOI素子の測定環境を整える。具体的には、熱流入や熱放射を考慮した冷凍機内のケーブル配線と接続、室温での測定環境の構築を行う。
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Research Products
(1 results)