2015 Fiscal Year Research-status Report
リー・ヤンゼロとQCDの相構造 - 実験と理論と数値計算の総合的アプローチ
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26610072
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 純 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (30130876)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | QCD / クォーク / グルーオン / 格子QCD / 相図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、格子QCDの数値計算、実験データからLee-Yangゼロ点の分布を調べ、クォークとグルーオンの力学であるQCD(格子量子色力学)の相構造を調べることを目的としている。 QCDの相構造を数値シミュレーションで調べるためには、格子QCDの有限温度、有限密度の情報が必要となる。しかし、格子QCDは有限密度では符号問題という困難があり、これまで信頼できる結果を得ることは難しかった。この問題を解決するためにカノニカル法という手法で研究を進めている。 カノニカル法で構成したグランドカノニカル分配関数からLee-Yangゼロ点を求めるためには、高い次数の多項式からそのゼロ点を求めることが必要となる。そのような方法はリーマンによって提唱されていたが、実現は難しかった。本研究では倍精度をはるかに超える多倍長計算を使用することによってこの問題を解決することができた。 本年度は、実験値と格子QCDの数値結果からLee-Yangゼロを求めて解析を行うとともに、その高温での振舞いについても振舞いを近似的に求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
格子QCDのシミュレーション、実験データから多倍長計算を使用して実際にLee-Yangゼロを求めることができた。 今後の課題としては、より低温での振舞いを調べ、中性子星などの研究へ繋げることが考えられる。 また、現在はバリオン数に対応する化学ポテンシャルを使ってグランドカノニカル分布を構成し、Lee-Yangゼロを求めているが、実験で測定されているものは陽子数分布である。一方、荷電化学ポテンシャルを使って構成するカノニカル法は、数値シミュレーションおよび実験において求めることが可能であり、より直接的な比較が可能になる。この可能性を探求する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
より低温での数値シミュレーションの実行 格子サイズを変えた時のLee-Yangゼロの分布の変化の調査 荷電化学ポテンシャルによるカノニカル法の構成と、それからのLee-Yangゼロ分布の構成 現在は、u, dクォークに相当する2フレーバーQCDのシミュレーションを遂行しているが、さらにs-クォークを導入し、ストレンジネスに対応するLee-Yangゼロ分布の構成
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Causes of Carryover |
Lee-Yangゼロの数値計算法を構築し、そのデータとして必要な純虚数領域での格子QCD計算のコードの開発とその確認が終わっている。これまで空間が8*8*8および10*10*10の小さな格子で計算してきた。 極東連邦大学と共同研究を開始し、そこのグループにより16*16*16および24*24*24の大きな格子上での計算が実行可能となった。そのデータ取得を待ってLee-Yangゼロの計算とその物理的解釈、とくに相転移の情報を引き出すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
共同研究打ち合わせのための極東連邦大学への旅費に使用する計画である。
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