2015 Fiscal Year Research-status Report
架橋カーボンナノチューブにおける励起子-励起子消滅と光子相関
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26610080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 雄一郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60451788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 行志 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20466775)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノチューブ・フラーレン / 光物性 / 物性実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、単一の架橋カーボンナノチューブにおける励起子‐励起子消滅過程が光子相関に与える影響を調査するため、通信波長帯Hanbury-Brown-Twiss干渉計の構築に取り組んだ。励起光源としてフェムト秒チタンサファイアレーザー、検出器としてInGaAsアバランシェフォトダイオードを用い、これらの機器と光子相関計数器を接続して測定系を構築した。干渉計を構成するビームスプリッターから検出器までの光学系を、ナノチューブの評価に利用している顕微フォトルミネッセンス系に組み込み、評価後にそのまま光子相関測定を開始可能な測定系とした。検出感度を高めるために光学系を最適化したほか、実験系の安定性を向上させるために温度変化や気流の影響を減らす工夫を施した。また、自動測定を実行するためのソフトウェアを開発して長時間積算を可能とする試料位置追跡システムを実現した。その結果、単一の架橋カーボンナノチューブのフォトルミネッセンスにおいて、室温でのアンチバンチングの観測に成功した。 また、実験的に確認したパラメーターを用いて励起子生成・拡散・再結合をモデリングしたモンテカルロ・シミュレーションにより、単一光子生成のメカニズムを調査した。集光したレーザー光の直径の範囲内で励起子を生成し、再結合するまで拡散させるが、二つの励起子の軌跡が交差した場合には片方を消滅させることで励起子‐励起子消滅過程をモデル化した。シミュレーション結果では二光子相関係数に励起光強度依存性が確認されたほか、励起子拡散長および励起光の集光径にも依存性が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では本研究では単一の架橋カーボンナノチューブにおける光子相関測定を行い、その架橋長さやカイラル指数依存性、そして励起強度の影響を詳細に調査し、励起子-励起子消滅過程による室温における単一光子発生の有無を検証することを目的としているが、昨年度に励起子-励起子消滅過程を定量的に評価することを優先したため、今年度に光子相関測定系が構築できたものの、十分なデータの収集と解析までは至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き光子相関のデータの収集を進め、モンテカルロ・シミュレーションと実験結果を比較することにより、単一光子生成機構を明らかにする。まずは励起光強度依存性を測定し、これを様々なナノチューブに対して行うことにより、架橋長さや拡散長による単一光子生成効率への影響を明らかにする。また、シミュレーション結果と実験データを比較して整合性を確認し、採用したモデルの妥当性を検証する。
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Causes of Carryover |
今年度は単一の架橋カーボンナノチューブにおける光子相関測定を行うために測定系を構築し、系統的にデータを収集することにより励起子-励起子消滅過程によって単一光子が発生していることを明らかにする計画であった。しかし、昨年度に励起子-励起子消滅過程の解析を先に進めることを優先し、その後に光子相関測定系を構築することとしたため、今年度は十分なデータの収集と解析までは達成できず、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該研究費は、主としてさらなるデータ収集に必要な光学部品などの消耗品に支出するほか、成果発表のための旅費や学会参加登録費などに充当する計画である。
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Research Products
(18 results)