2014 Fiscal Year Research-status Report
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26610087
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
篠塚 雄三 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30144918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山門 英雄 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (30242035)
伊東 千尋 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60211744)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 嫌光性 / 光誘起構造変化 / 断熱不安定性 / ジアセチレン / フォトクロミズム / 1次元物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
光を遮断した暗黒下においてのみ(準)安定に存在する洞穴(嫌光性)物質を、理論と実験の協力の下に広く探索した。 まず1次元モデルを用いて、複数の励起子を作ったときの緩和形態を計算することで,協力現象としての嫌光性物質(相)の出現条件を理論的に探った。複数の安定構造ああるときの、ポテンシャル障壁の有無、障壁がある場合はその高さを定量的に計算した。複数のパラメータに対する相図を作成中である。 嫌光性物質であるジアセチレン誘導体結晶の作成に注力したが、光学測定可能なバルク単結晶の育成を十分進めることはできなかった。このため、石英基板上に蒸着法で薄膜を形成し、これについて532 nm光を用いて常温でラマン散乱測定を行ったところ、蛍光によるブロードなピークが546nmに現れた。このピークはラマン散乱測定後には著しく強度を減少させることがわかった。また、ポリジアセチレンについて多波長共鳴ラマン散乱測定を行ったところ、共鳴させる吸収体により、励起状態とカップルする分子振動に大きな違いがあることを見出した。この結果は、光誘起相転移の励起波長依存性の理解を進める重要な結果である。 洞穴物質の候補となりうる、1. ジベンゾチオフェン(C12H8S)誘導体とTCNBからなる錯体、2. 4-アミノ-p-ターフェニルとBHETCNQからなる錯体、3. フェナジンとFTCNQからなる錯体、4. 銀フタロシアニンやリチウムフタロシアニンからなる錯体の作成を遮光下で試みた。その結果、1、2、3については、新規結晶を得て、結晶構造解析を行うことができたが、光吸収により性質が恒常的に変わる現象は見出されなかった。一方、可視光を吸収して跳ねるという特異な性質を示す(洞穴物質の一種と考えられる)6,13-ジアザペンタセンの結晶について、何故光を当てると跳ねるのかについて検討し、その概要を明らかにし学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論面では、複数のパラメータに対する緩和励起状態の相図を作成中であるが、いわゆるドミノ倒しの機構に基づく光誘起構造変化との関係づけに関し、予定通りには進んでいない。 ジアセチレンに関しては、ジアセチレン誘導体の合成は成功し、精製も十分な制度で実施することができたが、光学測定に用いることができる十分な大きさの単結晶を得ることができず、測定が遅れてしまっている。ジアセチレン結晶の嫌光性について情報を得るために、自作蒸着装置を用いた蒸着法による薄膜作製を試み、測定を行うことができたが、薄膜は微結晶の集合体であるため、ラマン散乱スペクトルの構造について十分な解析ができていない。 一方、新規錯体の合成に関しては、これまでに上述のように、DBT-TCNB, DMeDBT-TCNB, 4-amino-p-terphenyl-BHETCNQ, Phenazine-FTCNQと4種類の新規錯体が得られている。これらについて、洞穴物質としての性質は見出せていないが、新規錯体を作成できているという観点からは、挑戦的な目的に対しての達成度は50%といったところである。6,13-ジアザペンタセンの光跳躍メカニズムの解明は、空気中の酸素や固体表面がからむ現象であり、また光照射後の生成物が通常の溶媒に不要であるという点から困難を極めたが、かなりのところまで機構を推測できており、以上併せてこの項目に関する目的達成度は75%程度である。
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Strategy for Future Research Activity |
理論面では、これまで光励起状態の断熱不安定性の有無に着目して研究を進めてきたが、今後は、その方向の研究推進とともに、発想を逆転し、現在ある物質の安定構造が、どのような仮想的な物質構造の光励起緩和構造に関連しているかという観点でモデルを立てて、解析を行ってみることも試みる。 ジアセチレン分子のライブレーショナルモーションは、600~1200cm-1の振動数を持つと予想されている。この範囲のラマン散乱スペクトルの温度変化を測定することにより当初目的の達成を目指す。バルク結晶の作製が困難である場合には、蒸着膜を用いた測定に切り替え研究を進める。ポリジアセチレンの示す嫌光性である光誘起相転移について、多波長ラマン散乱測定結果の解析を進め、励起状態とカップルする分子振動モードの違いから、光誘起相転移の励起波長依存性の説明を試みる。 引き続き、新たな低次元洞穴物質の開発・探索を行う。特に、平成26年度に新規錯体を得ることができなかったフタロシアニン系物質の合成に力を入れる。また、嫌光性物質を、意図的に光や酸素を遮断するように微細な空洞や結晶格子内に閉じ込めることにより、通常の環境下(室内光下・大気下)でも扱えるようにした洞穴物質(例えばフィルター物質で被覆した洞穴物質)の開発、およびそれに特定の外部刺激を与えることにより状態変化を起こさせる実験を試みる。
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Causes of Carryover |
旅費を計上していたが、発表に相応しい国際会議が平成26年度中にはなく、支出の見込みにくい違いが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中国の重慶で開かれる国際会議WCAM-2015に出席するための費用として、平成27年度の予算に加えることで使用する。
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Research Products
(2 results)