2014 Fiscal Year Research-status Report
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26610099
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡崎 竜二 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50599602)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遷移金属酸化物 / 熱伝導 / 非平衡電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質が示す非線形伝導(オームの法則からのずれ)は、非線形エレクトロニクスとして応用分野において広く利用されているだけでなく、物質に電流を流した状態が典型的な非平衡状態であることから、非平衡統計力学を固体物理学の立場から研究していくための格好の研究対象として注目を集めてきた。その一方、電流通電が電気抵抗率だけでなく他の輸送係数に及ぼす影響(ゼーベック係数、ペルチェ係数、熱伝導率など)はこれまでにほとんど調べられていない。本研究では、電流通電が物質の熱輸送現象に及ぼす影響を調べるために、試料の自己発熱効果を考慮した電流通電下熱伝導率測定装置の開発を進めている。 本年度は、電流通電下で試料温度を適切に評価するために、非接触で試料温度を評価可能なサーモグラフを導入し、標準試料としてステンレスに電流を流しながら熱拡散率の評価を行った。測定法は、熱伝播の位相で拡散率を評価することのできる周期加熱法を用いて行った。この手法の利点は、試料に導入した熱量の絶対値の計測が不要な点であり、自己発熱した試料の熱拡散率を測定する上で大きなアドバンテージを持った計測法である。まず、試料に電流を印加しない状況では、測定した熱拡散率は文献値に対して10%以内のずれにとどまっていることがわかった。次に電流を印加して測定を行ったところ、有意な自己発熱が見られたが、その状況でも非接触のサーモグラフを利用することにより、試料の熱拡散率を評価することができた。次年度は、この手法を非線形伝導を示す強相関電子系に適応していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、熱伝播の位相で拡散率を評価することのできる周期加熱法の立ち上げを行った。まず標準試料としてステンレスの熱拡散率計測を行ったところ、試料に電流を印加しない状況では、測定した熱拡散率は文献値に対して10%以内のずれにとどまり、電流印加時においても試料の熱拡散率を評価することができた。これにより、測定装置の立ち上げという初年度の目標を達成できたと考えるため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度立ち上げた測定装置を用いて、非線形伝導を示すルテニウム酸化物の非線形熱伝導計測を進めていく。いくつかの試料の再現性や、等価数置換系物質の測定も行い、電流が熱輸送に及ぼす影響を議論する。
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Causes of Carryover |
以前室温近傍での測定に限定しており、温度コントローラ等の備品の購入を行わなかったため。また、学会発表等の旅費を別の予算においてカバーしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・ペルチェ温度コントローラなどを購入し、より広い温度範囲の測定を行う。 ・海外学会も含め、成果発表を行う。
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Research Products
(6 results)