2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26610103
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 健太 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70586817)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 結晶カイラリティ / ドメイン / フェロイック |
Outline of Annual Research Achievements |
原子のらせん構造の右巻きと左巻きを特徴づける物理量“結晶カイラリティ”が多彩な新奇物性を誘起するという従来研究の成果は、外場による結晶カイラリティ制御を通じた斬新な物質機能の創出が可能であることを示している。本研究は、これまで未開拓であった結晶カイラリティの外場制御を重要な研究課題として位置づけ、その学術的基礎を構築することを目的としている。本年度は、候補物質の合成および測定系の構築を行い、結晶カイラリティ制御の可能性を検証した。得られた主な成果を以下に述べる。
1. 電場による結晶カイラリティ制御可能な系として、電気分極と結晶カイラリティが共存する物質群に着目し、その単結晶合成を行った。当初主要な研究対象としていたCsNO3においては、リーク電流の問題により十分な電場が印加できず、現在のところ電気分極反転に伴うカイラリティスイッチングは確認できていない。この問題を受け、新たな候補物質の単結晶合成を行い、電場による電気分極反転が可能であることを確認した。現在、同物質における電場によるカイラリティ反転の検出を試みている。 2. 一軸応力による結晶カイラリティ制御が可能な系として、強弾性と結晶カイラリティが共存する物質に着目した。その一例としてCa2Sr(C2H5CO2)6の単結晶を合成し、一軸応力印加下におけるドメイン構造観察を行った。その結果、過去に報告された強弾性ドメインスイッチングに伴う結晶カイラリティの反転を再現することに成功し、さらにこのカイラリティ反転が可逆的であることを示唆する初めての実験結果を得た。現在、カイラリティ反転可逆性を確定する実験を遂行するとともに、その微視的機構の考察を行っている。 3.物質探索の過程において結晶カイラリティと磁気秩序が共存するb-NaCoPO4の合成に成功した。同物質が顕著な電気磁気効果を示すことを発見し、これを学術論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一軸応力による結晶カイラリティ制御に関しては、ある種の強弾性体において、一軸応力により可逆的にカイラリティ反転が可能であることを見出し、その微視的機構を考察する段階に達している。一方で、電場および光照射によるカイラリティ制御に関しては、候補物質の単結晶は得られているものの、いくつかの実験上の困難により検証実験が十分には行えていない。以上から、研究はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
強弾性と結晶カイラリティが共存するCa2Sr(C2H5CO2)6に対して、一軸応力印加前後における単結晶X線構造解析を行い、一軸応力によるカイラリティ反転の典型例として確立することを目指す。また、昨年度に単結晶合成に成功したカイラル強誘電体に対して、電場印加前後における単結晶X線構造解析を行い、電場による結晶カイラリティ反転の可能性を追究する。これらのカイラリティ反転現象を結晶構造の観点から議論し、微視的メカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(7 results)