2015 Fiscal Year Research-status Report
振動場と弾性場のカップリングによるソフトマターのシミュレーション手法の開発
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26610110
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川勝 年洋 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20214596)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 粘弾性 / 高分子ネットワーク / 流体粒子 / 振動現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
物理ゲルに代表される架橋構造を持つソフトマターは、そのソフトな弾性特性とともに流動を伴う粘弾性特性を持つ点で特徴的である。この粘弾性特性を生かして、粘着剤やロボットの動力源(アクチュエータ)としての利用の可能性が広がっている。本研究では、粘弾性特性を有する物理ゲル・高分子濃厚溶液等を流体粒子(SPH)法と固定メッシュ法の併用した方法でモデル化し、その外力に対する応答や、化学反応とのカップリングによる変形を解析した。 1)体積相転移を伴う化学ゲルと振動反応がカップルした系のゲルの変形のダイナミクスを SPH+固定メッシュ法でシミュレーションする方法を開発した。化学振動波の伝播に伴いゲルの体積相転移が誘発され、変形が周期的に生じる現象をシミュレーションから再現することに成功した。 2)高分子濃厚溶液を2枚の固体壁間に充填した系を粘着剤のモデルとみなして、引きはがし挙動の粘弾性シミュレーションをSPH法を用いて行った。粘着剤の自由表面をSPH法で表現する点に困難が生じ、問題の解決に向けて検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度はワークステーションを導入するとともに、研究補助員を時間雇用してこのワークステーションを用いたシミュレーションにあたらせる計画であったが、人員の確保がかなわずワークステーションの購入を保留するとともに、研究の進展も遅れが生じた。このため平成28年度に期間延長を行い、研究補助員を雇用することで、研究の進展を図る。 個別の研究の進展に関しては、 1)ゲルの体積相転移と化学振動のカップリング:物理ゲルが最終目標であるが、当面は化学ゲルを用いて方法論の開発を行っており、基本的な方法論の開発には成功した。 2)高分子濃厚溶液でできた粘着剤のひきはがし:自由境界面の取り扱いに困難を生じていたが、自由界面を不連続面として扱い、界面張力を設定することでこの問題を解決できることがわかり、シミュレーションによる検証を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長を認められた平成28年度は、ワークステーションの購入と人員の確保により、研究を進捗させる。前年度までは架橋点が組み替えることのない化学ゲルを対象としたモデル化をおこなっていたが、アクチュエータとしては架橋点の組み替えが生じえる物理ゲルの方がより重要であり、このモデル化とシミュレーションを行う。また、化学振動や粘着剤の粘着した壁面の振動などによる強制的な外部振動の結果、ゲルがどのように変形するかを開発したシミュレータを用いて解析し、アクチュエータとしての機能あるいは粘着剤としての性能の評価を行う方法論を確立する。
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Causes of Carryover |
当初計画では研究補助員を時間雇用し、シミュレーションプログラムの開発とシミュレーションの実施およびデータ解析の任に当たらせることを考えていたが、この業務を行う人員の確保ができなかった。このため、当該研究補助員が使用予定であったワークステーションの購入を差し控え、基礎理論の構築とテストシミュレーションの実施を行った。このことにより、研究補助員の人件費およびワークステーションの購入費用が平成28年度に繰り越しされた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究補助員の雇用と早期のワークステーションの導入により、前年度実施できなかったシミュレーションの実施を促進する。
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Research Products
(5 results)