2015 Fiscal Year Research-status Report
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26610111
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 千尋 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (40599122)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 統計物理学 / 素因数分解 / 相転移 / モンテカルロ法 / 計算量理論 / スピングラス |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度研究で発見された数値サンプリング領域ならびに熱力学量の2度にわたる劇的な変化を、相転移現象の観点から調べた。エネルギー-ハミング距離平面上の状態密度分布(ミクロカノニカルエントロピー)の特徴的な形状から、2回の劇的な変化がそれぞれ、1次転移と2次転移の中間的な性質を持つ新奇な相転移と、比熱の凹みとして見出される現象であることを明らかにした。この点を投稿中の論文に加筆した。今後の興味として、素因数分解問題の計算論的性質、つまりがサイズの準指数時間で解くことができるという性質とこの相転移に関連性が見られるかどうかがある。 また、量子相転移の振る舞いを通して量子アニーリングに対する本模型の計算量的性質を明らかにする目的で、横磁場アニーリングにおける最小ギャップの振る舞いを小さい合成数の場合に関して網羅的に調べた。ハミルトニアンの厳密対角化により数値的にアプローチしたが、合成数の桁が小さくサイズ依存性がまだ明らかにならないため、相転移の振る舞いを明確にするには至っていない。この点を克服するため、年度後半から量子モンテカルロ法によるギャップ評価を試みている。計算プログラムの準備が済み、現在、試験的な計算結果の確認を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に執筆していた論文の出版が遅れているため、成果発表の点で遅れていると判断した。ただし、本年度の計画にあたる『多様な合成数に対する網羅的な数値計算』の内容は遂行され、執筆中論文にも反映されている。また、『量子アニーリング模型の構築および性能評価』に関しても、量子ハミルトニアンの厳密対角化、並びに量子モンテカルロ法によるエネルギー準位の計算を開始し、得られた結果について日本物理学会で発表した。そのため、研究内容そのものの進捗はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
成果発表に関して、平成28年度の初期に執筆中論文の出版を目指すとともに、平成27年度および28年度初期の研究成果を国際会議AQC2016にて発表する。 また研究内容の進捗に関して、平成27年度後期から開始した量子ハミルトニアンについて多様な合成数インスタンスの網羅的な数値計算を行う。またShorのアルゴリズムの量子ハミルトニアンの最小エネルギーギャップの評価を行う。
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Research Products
(3 results)