2014 Fiscal Year Research-status Report
鉄イオンは細胞の磁場センサーか:鉄貯蔵タンパク質フェリチンの低周波磁場感受性解析
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26610128
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮田 英威 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90229865)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 50 Hz magnetic field / ferritin iron release |
Outline of Annual Research Achievements |
フェリチンは細胞内に存在する球状蛋白質で、内部に8ナノメートルの空洞を持つ。鉄イオンはここにIII価の結晶として貯蔵されているが、ヘムの構成要素として用いられる場合などはII価に還元され、たんぱく質の殻にあるチャンネルを通ってフェリチン外に放出される。先行研究(Cespedes & Ueno, Bioelectromagnetics, 2009)でこの鉄イオン出入りの速さにメガヘルツ帯の磁場が影響するという報告があった。一方我々は以前より50ヘルツ磁場が細胞の一酸化窒素産生に影響することを報告してきた(Miyata et al., J. Phys. Con. Ser., 2013)。鉄イオン放出にも一酸化窒素号税にも酸化還元反応が関与することから、われわれはフェリチンにおける鉄イオンに50ヘルツ磁場が影響するかどうかに興味を持った。 ファンクションジェネレータで発生させ、バイポーラ電源で増幅した50ヘルツ交流電流をヘルムホルツコイルに流し、50ヘルツ、または1キロヘルツ(いずれも3.2ミリテスラ)の磁場を発生させ、フェリチン溶液を5時間曝露した。曝露後にII価鉄指示薬フェロジンを加え、吸光度上昇で遊離II価鉄イオンを測定した。非曝露試料についても同様に測定した。先行研究を参考にフェリチンからの鉄イオン放出過程が鉄イオン結晶から蛋白質部分への鉄イオン移行、蛋白質部分からフェリチン外へのII価鉄イオン遊離、II価鉄イオンと指示薬フェロジンとの反応による吸光度上昇、という3ステップからなる、と仮定し、各過程に対する速度論的方程式を解いた。こうして得られた理論式を用いて実験曲線をフィッティングし、各ステップでの速度定数を見積もった。その結果唯一50ヘルツにおいて鉄結晶から蛋白質部分へのII価鉄イオン移行の速度定数が磁場曝露により数%有意に上昇することを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究の結果からはフェリチンからの鉄イオン放出に50ヘルツ磁場が与える影響は曝露、非曝露でかなりの差があると予想された。このため、当初計画ではII価鉄イオンとフェロジンの結合に伴うフェロジン吸光度上昇を定性的に比較することで磁場の曝露影響を評価する予定だったが、「研究実績概要」で述べた通り、実験的に得られた差は数%であった。そのため解析方法をより精密なものにする必要が生じた。そこで「研究実績概要」に述べた通り、小さな差でも見逃さないために実験方法を工夫する(系統誤差を避けるため、曝露と非曝露試料の測定順序をランダム化すること、サンプル測定用セルごとの吸光度の差をあらかじめ測定しておく)こと、フェリチンからの鉄イオン遊離を3つのステップを分けてレート方程式を作り、これを解き、Gnuプロットに基づいたフィッティング法を行うためのプロトコルを開発すること、にかなりの時間を投入した。 以上の理由から、計画では初年度に行うはずだった磁場条件依存性の検討が不十分となっている。ただし、上記の研究経緯で得られた結果そのものは先行研究とは異なる新規なものである:先行研究では磁場曝露によりフェリチンへの鉄イオン吸収が増加するという結果が得られていたが、本研究では遊離が促進されるという結果であった。さらに、フェリチンからの鉄イオン遊離過程が先行研究よりはるかに精密に解析できるようになったことから、今後はこの手法を用いて当初計画に沿った実験を行うことで研究全体を発展・完成させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績概要」で述べた通り、我々はフェリチンからの鉄イオン放出を定量的に解析する手法を確立し、放出過程に50ヘルツ磁場が弱いながら影響することを明らかにした。一方1キロヘルツではそのような差は見られなかった。そこで、当初計画にある目標達成のため、周波数と磁場強度の様々な組み合わせでフェリチンからのII価鉄放出過程を測定し、解析する。その結果をCespedes & Uenoによる先行研究(Bioelectromagnetics, 2009)と比較検討し、本実験で初めて明らかにされた、低周波磁場によるフェリチンからの鉄イオン遊離促進のメカニズムの手掛かりを得たい。さらに、当初の実験計画に従い、フェリチンの鉄イオンコアを用いた磁場影響の検討ならびに、フェリチン蛋白質殻部分を用いた鉄イオン吸収過程における磁場影響の検討を行う。 磁場条件探索の上で予想される課題として、高周波数(>0.1キロヘルツ)におけるヘルムホルツコイルインピーダンスの著しい増加がある。先行研究との比較においてはメガヘルツ帯までの実験が必要となるが、周波数増加とともに出力電流の最大値が減少し、それに比例して磁場強度も減少する。そこで周波数に応じて出力をゼロから最大となるまで変化させて曝露実験を行う。このようにして周波数と磁場強度に応じてフェリチンからの鉄イオン遊離レートがどのように変化するかをマトリックス状に調べる。高周波数では十分な出力は得られないが、フェリチンの磁場応答が全体としてどのようになっているかの様子はつかめると考えている。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Analysis of gene expression in human umbilical vein endothelial cells exposed to 50-Hz magnetic field2015
Author(s)
Miyata, H., Ishido, M., Nakayama, M., Ishizawa, K-i., Murase, M., Hondou, T.
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Journal Title
J. Integrated Creative Studies
Volume: 1
Pages: 01053008-1-11
Peer Reviewed / Open Access
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