2014 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子解析によるソリトン波の形成・維持メカニズムの解明
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26610129
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桑山 秀一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40397659)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソリトン / 細胞集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
衝突しても形や運動量を崩さず安定に存在し続ける波(ソリトン波)は、非線形を扱う物理学や数学等の基礎研究にとって、また光通信等の工学的な応用研究にとって重要な物理現象である。これまで生物の振る舞いにソリトン波の性質が存在することは報告されていなかったが、申請者は細胞性粘菌のある突然変異体が、衝突しても形や運動量を崩さずにすり抜ける波状の細胞集団(細胞ソリトン波)を形成することを発見し、生物の細胞レベルの現象にソリトン波現象が存在することを世界で初めて報告した(Kuwayama and Ishida, Scientific Reports, 2013)。本研究では、細胞ソリトン波形成の原因遺伝子を同定しその生物的機能を解析することにより、細胞ソリトン波の物理的性質を検討することを目的とした。 初年度は当初の計画通り、①遺伝学的解析、②ソリトン波関連遺伝子変異株の作製、③遺伝子発現ライブラリーの作製、④変異株への遺伝子発現ライブラリーベクターの導入を行った。その結果約2000株のスクリーニングを行ったが、目的とする復帰形質転換株を得ることはできなかった。これは予想された困難であったため、計画書にあるように最先端のDNA配列解読機器を利用しソリトン波変異株のゲノムにあるすべてのゲノム配列の解読を行った。 幸い新学術領域研究「ゲノム支援」によって、全ゲノム配列の決定をしていただけることになり、ソリトン変異株2株(KI-5とKI-10)の全ゲノム配列とその親株のゲノム配列、またソリトン波形成前後における発現遺伝子配列の決定と比較を行った。その結果、KI-5とKI-10遺伝子コーディング領域内にそれぞれ99と98の変異箇所が判明した。そのうちKI-5の5つの変異遺伝子について遺伝子破壊株を作製を試み、1つの遺伝子について破壊株を得ることができた。しかしながら、この遺伝子破壊株はソリトン形質を示すものではなかったため、現在順次遺伝子破壊株の作製を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にあるように、初年度中にソリトン変異株の変異遺伝子の同定と原因遺伝子候補の絞り込みを行うところまで進展することができたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したソリトン変異株の変異遺伝子の中から、ソリトン原因遺伝子の同定を行う。方法として、それぞれの変異遺伝子の遺伝子破壊株を作製し、それらのうちソリトン波形成の表現形を示すものを探索する。遺伝子破壊株にソリトン波形成の表現形を示すものが見つからなかった場合、遺伝子の塩基置換がソリトン波形成に重要である可能性が考えられるので、それらの遺伝子破壊株に塩基置換した遺伝子を導入・発現させる。それらの形質転換体のうちでソリトン波を形成するものがあるかを引き続き探索する。
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