2014 Fiscal Year Research-status Report
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26610130
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
笹井 理生 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30178628)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クロマチン / ゲノム / 分子動力学計算 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム動力学による転写制御機構の解明を行うため、ヒトのリンパ芽球様細胞の核内ゲノムの立体構造を計算する理論モデル構築に向けて研究を行った。このモデルでは、3C拡張法(Hi-C法、TCC法)実験によって得られるゲノム2点間の物理的な接触頻度データをもとに、ヒトの2倍体細胞核内の染色体すべての立体構造を計算する。この計算では、2倍体細胞の相同染色体ペアにおけるそれぞれの染色体のHi-Cデータへの寄与を理論的に分離する必要が生じるため、新しい理論的方法を開発しなければならない。26年度は、100ないし1000個の構造のアンサンブルをシミュレートし、計算される平均接触頻度が実験と一致するようにアンサンブルに含まれる構造をモンテカルロ計算によって変形させた。その結果を用いて相同染色体ペア間の相互作用を自己無撞着に分離する方法を分析し、2つのX染色体が互いに異なる構造をとるなど、実験と整合的な結果を得た。 また、酵母ゲノムモデルをさらに発展させ、実験データのバイアスを取り除くための標準化法を用いた統計的処理を行うことによるシミュレーション結果への影響を分析した。核内に遺伝子が運動する空間範囲と遺伝子活性との相関について興味深い結果を得て、論文にまとめる準備を行った。 27年度には、26年度に開発したヒトゲノムモデル、酵母ゲノムモデルをさらに洗練し、蛍光分布測定、遺伝子発現データなど、実験データとの比較を行って、研究目的の実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2倍対細胞の自己無撞着計算法を開発し、基礎となる実験データのバイアスを取り除く方法の分析など、研究目的を達成するための理論的方法の構築を行った。27年度以降は、この成果をもとに、具体的なモデル構築を推進することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度には、26年度に行った2倍対細胞の自己無撞着計算法、および実験データのバイアスを取り除く方法の開発を踏まえ、500kb程度以下の解像度を持つヒトゲノム動力学計算を実現させる。研究員の雇用により研究の推進をはかり、28年度には結果を整理して公表する。
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Causes of Carryover |
26年度に大学院生とともに構築したモデルをさらに発展させるため、27年度に研究員を雇用し、研究を加速させる必要が出てきた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度に研究員を雇用するための費用として算入する。
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