2016 Fiscal Year Research-status Report
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26610130
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
笹井 理生 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30178628)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クロマチン / ゲノム / 分子動力学計算 / 転写制御 / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム動力学による転写制御機構の解明を行うため、ヒトの繊維芽細胞の核内ゲノムの立体構造を計算する理論モデル構築に向けて研究を行った。ヒストン修飾など、エピゲノム情報を29次元ベクトルとして表現し、ニューラルネットの深層学習の方法により、29次元から6次元の表現に高精度で還元する方法を開発した。この方法を用いて、染色体各場所がどの程度の凝縮度を持つかを100kbの解像度で推測する方法をつくり、凝縮度に応じて、各場所が異なる反発相互作用を持つと仮定したモデルによる動力学計算を行った。その結果、不均一な反発相互作用によって核内に相分離が生じ、染色体のコンパートメントが形成されること、HiCデータが大まかに再現されること、核内ラミナとの接触頻度の測定値が再現できることなど、核内のゲノム構造の重要な特徴を説明するモデルをつくることに成功した。さらに、29次元より少ないエピゲノム情報で同等の表現ができないかエピゲノム情報の分析を進めるとともに、染色体局所構造のパッキングと顕微鏡観測データの比較を行った。
また、昨年度まで行ってきた酵母の間期核内ゲノム構造についての動力学計算モデル開発をさらに進め、染色体テロメアが核膜へのアンカーを失う変異体における遺伝子の空間分布を計算した。変異による転写活性の変化と空間分布の変化を解析して、遺伝子分布の重なりを評価する新しい計算法を導入することにより、変異による構造変化と機能変化の相関について、興味深いデータを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
不均一な反発相互作用による相分離の結果、核内ゲノム構造の主要な特徴が説明できるという成果は、当初の計画時には予期できなかった重要な成果である。この発見をもとに、包括的、かつ高精度なゲノム動力学計算を行う道が開けた。
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Strategy for Future Research Activity |
29次元のエピジェネティックデータが利用できるのは、例外的に豊富なデータが蓄積されている繊維芽細胞に限られる。一般的に利用可能な数次元のエピジェネティックデータによるモデリングが可能と思われるため、機械学習の方法を開発する。これを合わせて、本研究課題の結果を国際学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
計画していたゲノム動力学計算の開発は成功をおさめつつあるが、核内のクロマチン密度分布についてより詳細な点まで明確に計算する方法への改良が望ましいと判明したため、計画を変更し、次年度使用額に残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はより詳細な計算を実行し、結果をまとめて学術雑誌に投稿する。投稿時の費用のため、次年度の予算を使用する。
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