2014 Fiscal Year Research-status Report
分子ラックピニオンギアとSlippy高速応答界面の原理
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26610132
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 潤 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10200809)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 相分離 / ぬれ / ラックアンドピニオン / バックフロー |
Outline of Annual Research Achievements |
長距離配向秩序を持つ液晶相では、分子の協同的な回転運動を電場印加や光照射によって誘起することができる。一方、液晶ディスプレイ用セルや光学セル内に封じ込められた液晶分子は、容器の壁面上では分子の配向方向が束縛されていて、アンカリングと呼ばれるこの界面分子束縛は、液晶ディスプレイの機能にとって本質的に重要かつ不可欠な要素となっている。しかしながら、この界面束縛は同時に界面上での分子回転運動を禁止するために、バックフロー(背流)と呼ばれる並進運動が励起され、ディズプレイの機能阻害になる。本研究構想では、この現象を能動的に活用し、分子スケールの回転―並進運動変換(分子ラック&ピニオンギア)の原理を研究し、自在に制御することを目的とする。また、完全自由な液体界面を用い高速・低電圧駆動可能なSmC*(強誘電)液晶デバイスのプロトタイプを作成する。 初年度である今年度は、巨視的相分離を用いた光励起法を用いて、対象となる界面を液晶中に作成することを実現した。固体である界面が、液体相で濡れることにより、分子運動が界面に拘束されないSlippery界面を実現できた。事実、試験用の液晶表示素子に液晶を封入して実験すると、しきい値電圧が1桁以上大幅に低減されていることが分かった。現在、応答速度の実測を行っている。次年度は、レーザー光を用いた光描画装置を開発し、適切なサイズのSlippery界面を自在に作成する方法を実現し、強誘電性液晶とブルー相でしきい値低減効果を実証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の1つである、”Slippery界面”を実現することができた。次年度は、計画通り、液晶の回転運動と並進運動の変換(ラックアンドピニオン)原理を実証すべく、実験装置の準備も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの外場(A:電場 B:円偏光レーザー光照射)を用いて分子の回転運動を励起する。現在、完全なSlippery表面を実現しているので、高分子化や界面の液体の枯渇などを利用して、界面での分子の束縛力を連続的に制御する。粒子などのマーカーや蛍光退色を利用して、分子の並進運動を観測することで、ラックアンドピニオンの原理を実証する。 連続的に分子の束縛力を制御する方法としては、A:温度によるガラス転移、B:Azo分子混合系における光誘起液体―ガラス転移を用いる。これにより、分子回転運動を並進運動に自在に変換するトルクコンバーターを実現する。ガラス転移現象は古くから知られる動的な転移であるが、転移点近傍で粘性率が10数桁変化するため、本申請のトルクコンバーティングに最適な原理となるはずである。
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Causes of Carryover |
分子回転励起用のレーザーの波長・スペックの割り出しに時間がかかったため、機種選定が遅れて機器の調達ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最適波長や、必要な最低光強度についての知見を得たので、本年度早期に光励起分子配向回転のための装置を購入して、実験を進める。
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Research Products
(14 results)