2015 Fiscal Year Research-status Report
差応力により生じる地震波速度・比抵抗異方性の実験的研究
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26610140
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
渡邊 了 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (30262497)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地震波速度 / 比抵抗 / 差応力 / 異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,地殻のような差応力のある場において,地震波速度や比抵抗にどのような異方性が生じるかを理解することであり,”応力状態ー流体分布ー物性の異方性”の関係を解明するための岩石実験を進めている。平成27年度の実施内容は以下の通りである。 (1)含水岩石の一軸圧縮下での弾性波速度および電気伝導度測定: 一軸圧縮試料のための電気伝導度測定用電極を開発し,塩化カリウム水溶液を含ませた細粒黒雲母花崗岩(庵治花崗岩)の一軸圧縮(最大軸圧:10MPa)を行いながら,弾性波速度および電気伝導度の測定を行った。P波速度は,圧縮軸に平行な方向で圧縮とともに顕著に増加したのに対して,圧縮軸に垂直な方向ではごくわずかに増加したのみであった。電気伝導度は,圧縮軸に平行な方向,垂直な方向とも圧縮とともに低下したが,その割合は圧縮軸に垂直な方向が平行な方向の約2倍であった。弾性波速度,電気伝導度の変化はほぼ可逆的であり,軸圧を取り除くとほぼもとの値に戻った。 一軸圧縮に伴う弾性波速度および電気伝導度の変化は,主として圧縮軸に垂直なクラック(開いた粒界)の閉鎖によるものと考えられる。圧縮軸に平行な方向での電気伝導度の変化は,圧縮軸に垂直な方向のクラックが平行な方向の電気伝導にも寄与しているためである。そのため,差応力による電気伝導度の異方性は,弾性波速度の異方性に比べて弱いと考えている。 (2)空隙微細構造の観察: イオンミリングにより岩石試料の研磨を行い,開いた粒界の電子顕微鏡観察を行った。開口が粒界に沿って変化している様子を詳細に観察することに成功した。 (3)物性変化のモデル化: 圧縮に伴う粒界の閉鎖によって,弾性波速度の増加,電気伝導度の低下が生じる現象論的モデルを構築した。ただし,異方的な変化はまだ説明できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に予定していたのは, (1)含水岩石の一軸圧縮下での弾性波速度および電気伝導度測定 (2)空隙微細構造の観察 (3)物性変化のモデル化 である。(1)はほぼ当初の計画通り,(2)は当初の計画よりも大きく進めることができた。(3)は空隙のモデル化までは進んだが,異方性を説明するには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)含水岩石の一軸圧縮下での弾性波速度および電気伝導度測定: 現在までの測定は軸圧が10MPa以下の条件である。これをより大きな軸圧の条件まで拡張する。 (2)空隙微細構造の定量化: 電子顕微鏡画像の画像解析により,粒界の開口分布を定量化する。 (2)モデルの構築: X線CT,電子顕微鏡観察によって得た空隙構造の情報を基にして,弾性波速度および電気伝導度の異方的変化を説明するモデルを構築する。
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Research Products
(4 results)