2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26610149
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 英太郎 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (60360749)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 深層循環 / 中規模変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋深層における中規模変動の構造や発生、伝播メカニズムを明らかにするため、高解像度の係留観測を実施するとともに、過去の係留観測データと高解像度海洋大循環モデルの解析を行った。 過去に係留観測が繰り返し実施された本州南東のB点(30N, 147E)に、平成26年5月に係留系を設置し、1年間半にわたる観測を実施中である。係留系は中規模変動の構造を捉えるために、東西・南北幅がいずれも100 kmの3×3の菱形状に配置し、鉛直方向にも深さ3 kmから6 kmの4深度に流速計を設置した。この係留アレイの構成は過去の係留観測と比べ、水平・鉛直方向ともに高解像度であり、通過する中規模変動の構造を十分に分解できると期待される。 高解像度の係留観測で捉えられる中規模変動の特性を把握するための予備的解析として、B点付近で1978-85年に行われた9回の係留観測結果を統合して解析した。その結果、B点付近では、45-70日周期の変動が卓越し、その変動は順圧な地形性ロスビー波の分散関係を満たしうることが示された。 また、中規模変動の発生、伝播メカニズムを明らかにするため、COCOモデル (Hasumi, 2006) に基づく渦解像の全球海洋大循環モデルの出力データを解析した。モデルの出力データでもB点付近では45-70日周期の変動が卓越し、モデルは深層の中規模変動をよく再現していた。45-70日の周期帯において、B点のすぐ北で西方伝播してきた変動が強化されており、そのエネルギーはB点の北東方向の黒潮続流から来たと考えられた。 以上の成果を国際学会等で発表するとともに、議論を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測面では、予定していた観測点に係留系9系を全て設置できたほか、係留点を囲むように16点のCTD観測を行うことができた。係留系を回収するための航海も採択され、平成27年10月に観測を予定している。また、1970-80年代にB点付近で行われた係留観測のデータを頂くことができ、個々の観測のデータを時間方向につなげて解析した結果、B点付近で捉えられる中規模変動が順圧な地形性ロスビー波で説明できることを見出した。さらに、渦解像海洋大循環モデルの出力データを解析した結果、B点付近で捉えられる中規模変動が黒潮続流起源と考えられるという結論を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年10月に設置した9系の係留系を回収するとともに、CTD観測を行う。得られたデータや衛星海面高度データなどを用いて、海洋深層の中規模変動の水平・鉛直構造や伝播特性を解明する。また、高解像度の係留観測で解明されたことも基にして、B点付近の過去の係留観測結果とモデルの出力データを解析し、本研究で行った係留観測域より広い範囲での中規模変動の構造を解明する。それにより、伝播する中規模変動の強化や減衰、構造の変化が起きるメカニズムを明らかにする。さらに、相関解析やレイトレーシングなどにより、中規模変動の伝播経路と発生場所を特定したのち、発生メカニズムを解明する。以上によりB点付近で解明されたことに基づき、過去に世界の様々な海域で行われた係留観測結果とモデルの出力データを解析し、普遍的な海洋深層の中規模変動の構造や発生、伝播メカニズムを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
2014年5月の新青丸KS-14-7次研究航海で使用する消耗品を購入予定であったが、早めの準備を行う必要が生じ、運営費交付金などを充てたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年10月の新青丸航海で使用する消耗品購入などに充てる予定。
|
Research Products
(6 results)