2015 Fiscal Year Research-status Report
国際宇宙ステーションから広視野・超高解像度撮像の試験観測及び解析手法の開発
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26610156
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 昭則 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10311739)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大気光 / 国際宇宙ステーション / 電離圏 / 中間圏 / 熱圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国際宇宙ステーションからのデジタルカメラによる超高層大気の広視野・超高解像度撮影を科学目的に活用するために、観測手法と解析手法の開発を行った。宇宙飛行士による撮影は、広い視野と高い空間分解能、という長所を持つが、科学目的の観測ではないため、(1)姿勢と視野の情報の不備、(2)輝度情報の不備、(3)分光がされていない、という問題点がある。これらの、問題を解決するための手法を開発し、本研究で行われる試験的観測のデータに加えて、過去に行われた撮像観測のデータも用いて、科学目的でない画像の科学的な利用のための解析手法の開発を進めた。観測としては、国際宇宙ステーションからのデジタルカメラによる観測を昨年度実施した2015年8月8日に実施した。これまでの観測と合わせると十回の観測を実施したことになり、様々な観測条件による観測が実施できたことになる。今年度の観測ではNikon D4という新しい機材を用い、高感度、高分解能な撮像モードを試行した。昨年度に引き続き、得られた観測データを用いて、解析手法の開発を進め他。画像に映っている町灯りを用いて撮影方向、視野幅、撮影位置などの情報を推定する手法の改良を進めた。また、地上において同型のカメラとレンズを用いた校正実験を実施し、その波長特性、感度特性などの検証を行い、測定データの校正に用いた。特に2014年8月26日の観測は、ISS-IMAP/VISIとの同時観測の条件も良かったことから詳細な解析を進め、中間圏ボアと呼ばれる構造の3次元構造の解明を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際宇宙ステーションからのデジタルカメラによる撮像観測を昨年度までの実施分も含めて十回実施できた。月齢、季節、太陽活動度、緯度、経度、国際宇宙ステーションの環境など様々な条件での観測ができ、当初想定していたデータの取得ができた。また、国際宇宙ステーションからの大気光撮像装置であるISS-IMAP/VISIとの同時観測にも成功し、両者の比較も可能となった。また、国際宇宙ステーションで用いている機材と同型のカメラとレンズを用いた地上での校正実験も実施し、感度特性などの測定ができ、観測データの補正を行うことができた。また、特徴的なイベントについて集中的に解析し、データ解析手法の開発も進みこれらによってデータの科学的解析も概ね順調に進んでおり、中間圏・熱圏・電離圏における特徴的な構造の解明も進みつつある状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、研究目的としてあげた「解析手法の開発」「データベースの作成」「地上校正実験」「地上からの観測の実施」「将来観測計画の作成」を完成していく。 解析手法の開発としては、これまで行われた撮像データも用いた解析を行う予定である。また、これらのデータを元に撮像データのデータベースの作成を行う。ISSからの宇宙飛行士による撮影画像の多くは公開されているが、超高層大気の撮影を目的としては撮影されず、「偶然」映っているものだけであるため、利用可能な画像がどれだけあるのか、その時刻、場所等が不明である。データベースとして整備する事で、地上観測や他の衛星との同時観測などに併せて利用可能なデータの検索が可能となる。このデータベースには、開発された手法で推定された姿勢視野情報、輝度情報、分光情報だけではなく、撮像領域の雲等の気象データ等も含まれる予定である。これは、宇宙からの撮像において、雲による月光の反射はノイズ源であり、データ解析に重要な情報であるためである。地上校正実験はすでに平成27年度に国立極地研究所の積分球や分光計等の設備を用いて実施したので、そのデータをまとめるとともに必要ならば追加の実験を実施する。特に分光機能がないこの撮像ではまた地上からの大気光撮像を実施することによっても実際の大気光に対する校正データの取得を行う。またこれらの知見を元に将来の大気光撮像観測計画に関する検討も進めていく。本研究によって、通常のデジタルカメラを用いて、特に姿勢視野を正確に固定しなくても超高層大気の科学目的に用いられる撮影データが得られるようになるため、国際宇宙ステーションだけでなく、超小型衛星なども視野に入れた観測提案の作成を行う予定である。
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Causes of Carryover |
計画時には、大量の撮像画像の解析を行うため、平成26年度、平成27年度に解析用サーバーを導入するなどの解析環境を新たに整備する予定だった。しかし解析手法を確立するためには、解析するイベントを限定して行う方が効率的であると判断したため、まずは少数のイベントを用いた解析を実施し大量のデータ処理を行っていなかったので、撮像画像の解析用サーバーは既存設備を用いて行い、解析環境の整備を平成28年度に行うとしたため、次年度の使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度までに解析手法については概ね確立されたため、大量データの解析を行うために平成28年度に大量データの解析環境の整備を行い、併せてデータベースの整備を行う予定である。
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