2015 Fiscal Year Research-status Report
マントル有機物の成因と起源:天然かんらん岩試料の詳細な観察に基づく証拠固め
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26610176
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
阿部 なつ江 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋掘削科学研究開発センター, 主任技術研究員 (80302933)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マントル有機物 / 岩内岳かんらん岩 / マントル捕獲岩 / X線マイクロCTスキャン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、研究に必要な試料採取を中心に、以下を実施した。 1. 試料の採取:ヨーロッパで行われた2nd European Mantle Workshop (EMW)および、直前に開催されたGoldschmidt Conferenceの巡検で、ポーランドおよびチェコ国内のマントル捕獲岩産地にてサンプリングを行い、東ヨーロッパ大陸下の最上部マントルに相当する新鮮なかんらん岩捕獲岩試料を複数採取した。さらにそれら試料を元に、現地で行われている岩石・地球化学的研究を元に、岩石学的な議論を行った。 2. 国際学会での発表:2nd EMWにおいて、予察的な結果をポスター発表し、マントル有機物に関する議論を行った。世界の主立ったマントル岩石学者の間で、本テーマについて注目度が上がってきていることが分かり、また試料提供オファーも得られたことは有意義であった。 3. 記載の開始:本年度採取した試料および金沢大学・荒井名誉教授から借り受けた北海道岩内岳試料、およびオマーンオフィオライトのマントルかんらん岩試料について岩石学的記載を開始した。特に、岩石試料中の微細な空隙などを調べるため、JAMSTEC高知コア研究所においてX線マイクロCTスキャナーを用いた観察を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、年度初めに所属機関において急遽受注した商業掘削への貢献という業務が発生し、7週間(4週間+3週間)の乗船作業、30%以上のエフォート(従事時間)を割くことになったため、全体的に研究に割くエフォートを充足することができなかった。そのため、研究成果が当初予定より少ない。
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Strategy for Future Research Activity |
この有機物の分布記載の手法について連携研究者や研究協力者と議論し、研究に使用する試料(産地)を限定し、有機物の検出方法についても、新たに見直すことにした。 具体的には、 1. 優先試料:Sugisaki & Mimura (1994)論文において有機物含有量の多い岩内岳かんらん岩と、オーストラリアのマントル捕獲岩を最優先で処理する。 2. 新たな手法:iMScopeやTEMなど、薄片や切片を用いて微小領域における有機物同定を実施する。さらに、マイクロX線CTスキャンを事前に実施するなど、多様な分析・解析方法を検討している。次年度に詳細な記載を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、年度初めに所属機関において急遽受注した商業掘削への貢献という業務が発生し、7週間(4週間+3週間)の乗船作業、および30%以上のエフォート(従事時間)を割くことになったため、全体的に研究に割くエフォート(従事日数)を充足することができなかった。そのため、研究に必要な試料の採取はできたものの、それらの一次記載およびキュレーションを主に実施した。しかし、当初予定していた化学組成の分析や物性計測を予定通り進めることが出来ず、高知コア研究所への実験旅費や、論文成果発表費を使用することが出来なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この有機物の分布記載の手法について連携研究者や研究協力者と議論し、iMScopeやTEM、マイクロX線CTスキャンなど、多様な分析・解析方法を検討している。平成28年度に詳細な記載を実施する予定である。そのため、JAMSTEC高知コア研究所への出張旅費を増やし、またCTスキャン画像の3Dイメージ処理や、画像データ処理を行うための専用のパソコンソフト(OsiriX Proなど)を購入し、効率的に研究を進める予定である。また、6月にヨーロッパで開催されるマントル掘削に関するワークショップに参加し、本研究の予察的結果を発表し、さらに海洋掘削岩石コア試料の追加サンプリング(10個程度)を実施する予定である。岩石試料の薄片製作や分析試料準備に関しては、できる限り業務委託とアルバイトを依頼し、短い期間で集中的に分析を実施する予定である。
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