2014 Fiscal Year Research-status Report
海洋の生物地球化学循環を駆動する有機金属化合物の分子・原子レベル動態解析
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26610187
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
吉村 寿紘 独立行政法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, ポストドクトラル研究員 (90710070)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機金属化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋や海底堆積物中に存在する微量金属は海洋生物によって有機金属化合物として利用され、光合成や窒素固定などの生化学プロセスを駆動している。生物がもつ有機金属化合物を直接定量することができれば、海洋の生物地球化学サイクルを解析する新しい手法となる。西赤道太平洋で採取された堆積物ならびに水を分析対象とする。本海域は陸源物質の流入が少なく、水塊中で生産された生物起源粒子が主な構成物であり、陸域からの無機鉱物の流入が少なく微量金属のバックグラウンドが低いので海洋中で生産された粒子の沈降・堆積過程における微量金属利用の検証には最適な試料である。水深3855 mと2447 mから得られた約15メートルの堆積物試料2本について堆積物試料のバルク金属濃度、ならびに間隙水の主要・微量金属濃度の測定を完了した。特に間隙水試料の金属濃度に大きな変化が認められ、3855mの試料に関しては銅・マンガンは深度と共に増加傾向、亜鉛・モリブデン表層4mで大きく増加した後、減少に転じた。鉄には大きな変化が認められなかった。2447mの試料については3倍の解像度で間隙水の採取を行い、鉄には約1mの振幅で増減が認められ、モリブデンは深度とともに減少した。今後は間隙水の酸素同位体比を測定し、堆積物中の水の移動について二つの試料間の対比を行う。誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)での有機溶媒の導入を行うために、有機溶媒試料導入キットと酸素ガスを用いた測定条件の決定に取り組んだ。100%メタノールなどの有機溶媒などを用いて良好な検量線が得られている。またこれまでに西赤道太平洋で得られた海底堆積物試料から湿式分離によって脂質画分の抽出を行い、中性脂質、酸性脂質のそれぞれについてICP-MSによる測定を行ったが、いずれも検出限界以下であった。今後は別の有機物画分の測定を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採取した堆積物試料のバルク濃度と間隙水の濃度測定に成功し、堆積物中の微量金属の増減を議論する基礎データを取得することができた。しかし、所属機関の異動が重なり、年度後半に十分な実験時間を確保することができなかったため、有機金属化合物の進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
バルク試料の分析と間隙水の測定についてはすでに完了しているので、現在得られている成果をまとめ論文作成を進める。HPLCとICP-MSの接続を行い、HPLCの測定メソッドの立ち上げを進める。堆積物の固体試料について、放射光を用いたμXAFS測定によって、試料から非抽出で化学状態分析を実施する。天然試料中のターゲットである微量金属が低濃度であった場合を想定して、試薬を用いた吸着実験も合わせて実施することで、生物ではなく無機的な吸着反応によって吸収スペクトルを得て対比に用いる。
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Causes of Carryover |
HPLCとICP-MSの接続が遅れたため、消耗品の分離カラムの購入を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定どおり高速液体クロマトグラフ用の分離カラム、試薬などの実験消耗品を購入する。また、実験は従来の所属である海洋研究開発機構で継続するため、現所属の東京大学大気海洋研究所から海洋研究開発機構への旅費を新たに計上する。
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