2014 Fiscal Year Research-status Report
生命誕生の謎を深海底熱水電流で説明する:電気パイライト表面代謝説の提案と実証
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26610188
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 正浩 独立行政法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 研究員 (60435849)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生命の起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、生命の起源が深海熱水噴出孔で起こったとする仮説を補強するために、前生物的な代謝反応が深海熱水噴出孔の鉱物表面においてその内外で発生する電気によって駆動するという作業仮説を実証することを目的としている。 始生代の熱水環境で発生し得る電気の特性を推定するために現生の深海熱水環境の電位測定を行った。測定は沖縄の深海熱水噴出域を対象に深海用無人探査機に装備した深海用電気化学測定システムを用いて行った。その結果、チムニー鉱物の表面が熱水の影響を受けてネガティブに帯電していることが観察された。これによって実際に深海熱水噴出孔で発生する電気がチムニー鉱物表面に強い電気的作用として現れることを実証した。さらに予想される始生代の熱水環境の物理・化学条件をもとに理論計算したところ、当時は現代より強い電場が発生することが予測された。 上記で得られた情報を元に実験室で始生代の熱水環境を模した電気化学セルを複数構築し、この条件下で有機化学的な反応が起こるかを観察した。その結果、ある基礎的な炭素代謝経路の中間代謝物の還元反応が連続的に複数回進行し、代謝経路の一部が駆動することを確認した。さらに熱水噴出孔チムニー鉱物やそれを模した人工鉱物を電極に使うことで反応がより進行しやすくなることも確認した。 これらの結果は、生命の起源に至る原始的な代謝経路が深海熱水噴出孔の鉱物表面で電気的に発生し促進されたことを強力に示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
始生代の熱水環境で発生している電気環境を再現するという目標は順調に達成できている。すなわち、現生の深海熱水噴出域での現場計測、試料採取、理論計算を行ったことで当時の環境を再現するための指標をかなり得ることができた。 実験室に構築した熱水発電モデルにおいて原始的な代謝経路を再現するという目標も順調に達成できている。すなわち、非常に基礎的で重要な炭素代謝経路の一部を電気的に駆動することを確認でき、その際に熱水孔に存在する鉱物が有利に作用することも確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
深海熱水における発電現象の影響の空間的拡がりを観測によって試算することで、熱水発電が化学進化に与える影響の大きさ・範囲・現実性を考察する。 熱水系鉱物の熱水孔における電気特性を解析し、当時の電気環境の再現作業の確度を上げる。 標的とする代謝反応を増やし、より広範囲の代謝ネットワークを再現する。 電気環境下における鉱物表面の化学物質の吸着状態と代謝反応進行の関連性を解析する。 研究成果を学会・論文で発表する。
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Causes of Carryover |
研究が効率よく進み条件検討にかける回数や種類が当初の計画よりも減ったため消耗品費を想定より使用しなかった。 また、当初計画していた陸上温泉でのモデル実験においては良好な環境を見出せず期間を大幅に短縮したため、旅費に未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験消耗品を購入するための物品費、現場計測および学会発表のための旅費、実験補助者を雇用する人件費として使用する。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Electrochemical CO2 Reduction by Ni-containing iron sulfides: how is CO2 electrochemically reduced at bisulfide-bearing deep-sea hydrothermal precipitates?2014
Author(s)
Yamaguchi, A., Yamamoto, M., Takai, K., Ishii, T., Hashimoto, K., and Nakamura, R.
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Journal Title
Electrochimica Acta
Volume: 141
Pages: 311-318
DOI
Peer Reviewed